Nishida memo

-西田東作品リスト-

一言感想

雑誌掲載時の感想です。ネタバレあり。


『奪う男』

[ 本田の部署に配属されてきた樋口は、高校・大学と本田の後輩だった男であり、そしてその出来の良さで、部活のレギュラーや彼女を本田から奪っていった男でもあった。 ]
 デビュー時から好きな漫画家さん。出てくる男たちは無骨だったり強面だったりして「美少年」やら「華奢」なんて形容できるものはカケラもない。でも、人間らしい可愛げを持っている。朴訥な絵柄もそれにマッチしていてグー。この話は、実は樋口は本田のことを好きで……というのは容易に想像できるんだけど、本田も本当は……というところがミソかな。コートを巡ってのシーンが、全然くさくならないのは、やっぱり人物描写が確かだからだと思う。本田と別れた彼女も、嫌味がなくていい感じ。(2000/03/15)


『総務にひとこと』

[ 総務部の坂本は企画室の原田室長が常務に叱責されているのを見てしまい……。 ]
 16頁ながら、とてもいい感じの作品。坂本が原田を慰めるのにとった方法が大胆というかオトナで、それでいて妙に笑えるコマがあったりして、味がある。実際の会社の雰囲気がよく出ているのもいい。今まで増刊号だけで本誌初登場というのが意外だったけど、これをからはどんどん描いていってほしい。(2000/06/18)


『課長になったら』

[ 南は男とキスしている現場を、同僚で昇進をかけたライバルでもある姫嶋に見られてしまうが……。 ]
 リーマンもの。
 24頁と、この雑誌の中ではページ数は少ないものの、読ませ度ではピカイチ。流行の絵柄ではないがじっくり会話が楽しめる、そんな系統の漫画家がついにボーイズラブにも登場してきたかと思えば喜ばしい限り。崩れ落ちそうな姫嶋を抱えて必死こいて足で椅子を引き寄せている南の表情が好きですわー。(2000/10/15)


『YOU GIVE』

[ 入院中の所長の代理として本社から首都圏万年最下位成績の営業所にやってきた橘は、以前、すちゃらか社員・青山が本社研修を受けた際の講師だった。バリバリの仕事人間になってしまった橘に青山は……。 ]
 「酔ったフリってのは営業でも使う技だぞ」などとなかなかに含蓄の深い台詞も飛び出すリーマンラブ。
 そういえば今回の話を読んで思ったけど、この作者の話には、“そのケはないはずなのに何故かアイツのことが気になって”的キャラは出てきませんね。皆さん自分の性指向についてはかなりはっきり意識してらっしゃるようで。まあ、登場人物の平均年齢も割と高めだし、まともに人生やってりゃ嫌でも気づかざるを得ない部分だし、ということなんでしょうか。ラストの青山と橘のくだけた日常会話もいい感じ。会話シーンもいける人なので、もうすっかり出来上がっちゃって倦怠期気味のカップル、でもやっぱりお互いが大事で〜みたいな話も描いてみてほしいかも。(2001/03/21)


『LIVE & LET…』

[ 裏社会とも太い繋がりのある金融会社の北村らは、大口の手形を不渡りにさせた島田に報復に出るが……。 ]
 殆ど前ふりなしの18頁。憎しみに似た強さで惹かれあう北村と島田。甘い言葉の一つもあるでなく、荒々しく互いを求め合う姿は、しかしながらきっちりやおいテイストを醸し出してます。さすがな作者の腕ですなー。なかなか迫力のある一作になってます。で、組織に追われることになった二人はこの後どうなったのかなー? とりあえず、海外にでも逃亡するのだろうか。そしてラストのコマ、北村の軽快な足取りからして、「……おまえは、もうちょっと××だと思ってたよ」(一部伏せ字)という述懐はあながち嘘でもなさそうな……(笑) ところでコミックスはまだ出ないのでしょうか。(2001/06/26)


『職場の花』

 非BL漫画。
 大企業を退職して派遣として働き始めた女性を描く。それなりに経験も資格もある主人公、だけど派遣先の職場が求めているのは古いタイプのOLで、悪い人達ではないのだけどアットホームなノリにいまいち馴染めず、結局自分の居場所が見つけられない。この身の置き所の無さというのは、すごく良く判る気がしますねー。上司に林檎むいてと頼まれる場面の、顔で笑いつつ“勘弁して欲しい…”とかね。12頁のショートストーリーですが、共感度は高かったです。あとちょっとラフな絵柄ですが(でも味がある)、おじさんおばさんキャラがとても上手いです。同じ派遣社員のマリちゃんも最初はアカるいだけの女の子に見えていたのが、結構いいコだと思えるようになったのが○。(2002/02/13)


『言葉にできない』

[ 社内恋愛中の中島と浦田だったが、外部コンサルタントの小林がいろいろとちょっかいをかけてきて……。 ]
 リーマンもの。
 海千山千のクセ者・小林次長が、システムのビジュアル系・浦田に迫ると見せかけて実は中島室長狙いなのがミソ。これだけ積極的に絡んでくる第三者キャラクターというのは西田漫画では珍しいかも。
 共犯者にしてしまおうとする小林を拒む中島とか(そしてその後会議にはきっちり出席。エライ)、浦田の泣き顔とか、見所も多いんだけど、やや場面場面の繋ぎの悪い箇所があったのが惜しまれる。小林が中島をトイレの個室に引っ張り込んだシーンとかね、最初は小林の言葉に怒った中島が相手の腕を掴んだのかと思いましたなり。ジャパニーズ・ビジネスマンのスーツ姿における没個性ぶりは周知の通りですが、顔が見えない場面で似たような柄のトーンを張るのは混乱の元だと愚考いたしますです。
 更に欲を言えば、中島はプライベートでは浦田のことをヒロと呼んでいるらしんだけど、いちゃいちゃシーンでそう呼んでいるところを見てみたかったなー。んでも、浦田もどういう風にあのおカタそうな中島室長をオトしたんでしょうねえ。過去編を激しく希望。
 ……小さなコマに描かれている浦田を見て、シュール君(ウゴウゴルーガ)を思いだしたのはヒミツです。
 現在、初コミックス発売中。しかし現在の掲載ペースでは次のコミックスが刊行されるのは一体何年後になることやら……。(2002/04/24)


『片想い』

[ 代理で出席した会合で、男に誘いをかけられた中西は思いきり相手を拒絶する。翌日、彼の前に篠原と名乗る昨日の男が謝罪に現れるが……。 ]
 畑違いのリーマンもの。
 基本的には、結婚を控えた同僚に片想い中の強面室長・中西にノリが軽くて懲りない他社営業・篠原がアタック、という組み合わせなんだけど、心理面での貸し借り(というか傷つき傷つけられ)が微妙にシーソー状態で、スイッチ一つで切り替えられる訳じゃない感情の揺らぎを巧く描き出しています。キャラクターが無言のカットが今回割と多かったような気がするのですが、これまた微妙に表情が描き分けられていて、いくらでも深読みできそうです。
 虚しくないセックスに辿り着いた二人のHシーンは、こういっては何ですが、萌え萌えというよりしみじみと味わい深いっす。あと、眠りに落ちる寸前の中西の顔が、子供みたいでとても可愛かったです。(などと本人の前で言ったら殴られそうだ)
 ただ、受け攻めがあまり重要でない話なので、そこがいいとも言えるし、それが曖昧なのはイヤという人にはお勧めできないとも言えるかと。(2002/12/24)


『夢の果て』

[ 組織の元で一流どころを相手に売春しているジョンだが、マネージャーにクリスがついてから仕事に身が入らず……。 ]
 マネージャー×商品(男娼)。
 一番、今回のテーマ(男娼特集)に添っているのはこの話かしらん。しかし西田漫画なので、若干トウが立っております。よれよれのジョンにときめいてしまいましたわ〜。
 始めは軽口を叩きながらクリスを誘っていたジョンが、物語の進行にしたがって次第にシリアスモードになっていく様子は痛々しささえ覚えるようです。今までにない大ゴマで描かれたジョンの表情がたいへんに印象的。
 んで、美しく決まった反面、微妙にクリスの身体的問題を回避したラストとなっている訳ですが、やはりあれは暗黙の了解ってヤツなんでしょうか、それともあくまでクリスはそのことには触れないつもりなんでしょうか。ちょっと気になってしまいました。や、だって、一度ジョンの前から逃げるように姿を消した身にしては、随分堂々とした態度だなあ、と思ってしまったもので。開き直ったか、ボスの後押しとかあったんですかねー。クリスから居場所については口止めを頼まれていたものの、あまりに沈み込んでいるジョンの姿を見て「べそべそして鬱陶しいから何とかしてやれ」とか何とか電話の一本もしてやりそうじゃないですか、あのボス。ただ、あの人、「…バイバイ、ジョン」というキャラクターかいな、とそこだけ違和感を持ちました。「あばよ」とか「じゃあな」とか、そっちの方が似合うと思うんですが。(2003/02/03)