[ アパートの火事で突然焼け出されてしまった大学生・葉月桂は住み込み家政婦の広告に応募し採用される。雇用主は株で食っているらしい加世と藤間という大学生二人で……。 ]
天国と書いてヘヴンと読む。株式関係の仕事で加世と藤間がどれくらい稼いでいるかは謎だが、やり手大学生のお住まいが一等地のマンション(しかもペントハウス)というのはお約束。気弱そうなメガネ君がトラブルに巻き込まれるのも楽しいお約束。初めてのHで感じまくっちゃうのも楽しい楽しいお約束。――が。加世、あんた受けじゃったんか。てっきり加世×藤間だとばっかり思っていたのでちょっとびっくり……。(つーか、どっちもOKそうだけど) 人は見かけによらぬものですのう。
[ 服飾デザイナー志望の友里は古着屋の店番中に、自分の作った服を見たデザイナーの淳弘にパタンナーとして見初められるが……。 ]
友里が淳弘に反応して相手の気持ちを知りたがるあたりが唐突。今まで友達(or相棒)で恋愛感情のカケラもなかったのに、それが前ふりもなくえらくスムーズにHオーケーな気持ちに流れてゆくのが、読んでてあれれ〜?という感じ。むしろ淳弘の方が感情の移り変わりが理解しやすい。友里視点なのに、当の友里の気持ちが判らないというのも妙な話だ。という訳で、発情前提の話作りだとしてももう少し心理的な発情の様子も入れてほしいっす。
[ 経済的には恵まれているが不仲な両親の元で育った高校生・今泉章吾の住むマンションの近所に一軒家を建てて木原千秋が引っ越してきた。章吾の親の金を気にもとめない千秋に惹かれてゆく章吾だが……。 ]
カラー付き。
あまり関係はないが29才社会人×高校生。
愛情に飢えた少年が求めていた暖かい居場所を得るまでの話、というJUNE的王道ストーリー。ちょっと台詞に頼りすぎというか心境を解説しまくりなので、それを抑えればもっと余韻が出たかも。が、やはり不幸な人が幸せになるお話は読後感が良いものです。ラストで章吾が学校から直帰でなく午後七時半に帰るのは、灯りがついていて“自分を待っていてくれる”場所に帰りたいからなんだろうな。しかし章吾よ、いくら千秋としたかったからといって、身体に力が入らなくなるクスリを飲ませたら、勃つものも勃たなくなるんじゃないかと思うんだが……。
[ 教師の咲坂千波と生徒の二宮灯、朱雀輝は千波の中に金平糖を入れてHをするような仲。ある日、千波は輝に自分と灯のどちらが好きか聞かれるが……。 ]
生徒×教師なのに、どう見てもショタ漫画に見えるのは何故……。そして1対1のHに目覚めた千波と輝はいいとして、灯の立場はどこ……? それにしても、Hシーンでの消し代わりのハートマーク×3って……ラブリーというより……マヌケだ……。
[ 不良生徒の高田は、生徒指導主任教師の江藤と生徒の松井の淫行場面を写真に撮り二人を脅すが……。 ]
脅したつもりが墓穴掘り。殴られ縛られしたあげく象もたまらんというクスリを使われ3P突入。まったくもって高田君には災難の限りですが、松井のおバカさんぶりと江藤のエロ教師ぶりがなかなか素敵でございます。ところで最終ページ、誰と誰がどう絡んでるのか判らんのですが……。それと、Hとは別の意味でイッちゃった松井君のぐるぐる目玉が怖いです〜。
[ 小学生の頃、交通事故で声帯を損傷し声を失った“ヤエ”こと八重樫順は、フリーライターの新妻春樹と知り合い、関係を持つようになるが……。 ]
携帯電話の画面で相手と“話す”ヤエに対して新妻の「肉声が出ないなら肉筆で書けよ」という台詞が印象的。新妻って他人に対してあまり距離を置かない人なのかな。社交辞令なしでどんどん間合いをつめてくる。嫌いな人はとても嫌いなタイプかも。面倒をみるという名目でその実、ヤエに強い執着を持っている幼馴染みの克也の存在も合わせて、どのように後編が展開してゆくのか気になるところ。
コミックJUNEといいピアスといい、つくづく目次が役に立たない雑誌ですな。ノンブル入ってるページ少ないんだもんよー。
[ 同じ大学の本条章仁と付き合っている矢神郁己。カラダのお付き合いも充実してすっかり本条に夢中な矢神だが、彼がたびたび誰かに呼び出されていくのが気になって……。 ]
巻頭カラー。
クール系×かわい子ちゃん系。
矢神と本条、両方の視点から話を進めているので、本条の隠し事が矢神にバレた時のインパクトがかなり目減りしてる気が。かといって矢神サイドだけの話作りだとよくある“一緒にいた女性はただの身内で”なオチでこれまたイマイチなんだろうな。それにしても、彼らってすごくナチュラルに同性とお付き合いしてるけど、といってゲイでもバイでもなさげ。恋愛についてどういう意識を持ってるんだろう。
[ やっと政に抱かれる願いが叶うかと思われた佳だが、ふとしたことで忌まわしい過去の記憶が甦ってきてしまい……。 ]
こりゃまたやっかいな問題が浮上してきたもので。今まで一度も佳は政に“自分より力を持つ荒々しい男の手”を感じたことはなかったのかな。大事にされてたもんねえ。
[ 本田の作風の変化に思わず本田の部屋を訪ねた羽鳥だが、もう担当ではないと冷たく突き放され……。 ]
やさぐれる本田(精神状態はどうあれ創作的な仕事をしなきゃならない漫画家は大変だ)、親しそうな本田と基の様子にショックを受ける羽鳥(それって妄想じゃないかと思うんだが……。兎にも角にも、ちみがしっかりしてないのが悪いのだ)、泣きが入ってる羽鳥につけ込むシンゴ(という程、今回はあくどいことをしてる訳じゃないが)、とバリバリ少女漫画路線全開で盛り上がってます(笑) 次回最終回。
[ 国境付近でついに追っ手に追いつかれてしまったジェラールとジャック。だが国民衛兵は二人にジャコバン・クラブの独裁が終わったことを告げるのだった……。 ]
ジェラール&ジャックシリーズ。最終回。
一発逆転、あっと驚くハッピーエンド。そして二人に訪れた熱い夜。ああっジェラール、そんなことを言っちゃ……って、露骨すぎてかえって萎えるがな。翌朝のジャックの天然ボケぶりが愉快です。しかしあまりに明るい未来にむしろ不吉なものを感じてしまうのは根性悪すぎだろうか。だって帰りを待ちわびられている人は大抵帰ってこないのが定石……。さすがに大幅加筆のコミックスで更に大どんでん返しってことはないだろうけど。
[ 家主の利紀と使用人アンドロイドのリクは実は相思相愛の仲。しかしリクを利紀が抱いてからリクが動かなくなってしまい……。 ]
カラー付き。
近未来もの。
愛は性別どころか人間と機械の壁さえも超えるという話。旧型のアンドロイドNo.11があんなに滑らかに話せるのに最新型のNo.32が「コンニチハ」といかにも機械しゃべりなのは妙では?とか、フィメールタイプが男とセックスも可能なら(それほど人間に近い作りでしかもそれが普及しているなら)メールタイプだってそれほど無理な改造をしなくたって、いたせてしまうのでは?等々疑問が。あと作者は、利紀がリクの引き渡しを拒む場面は直接、収集家と対決させるべきだったのではないだろうか。ただ部品を持ってきただけの中川に怒ってみたってしゃーねえべ?
[ ミトウの介入もありハーヴェイに率いられた民衆は“城”の侵入に成功する。一方、キリは以前のように身体を再生できずにいた……。 ]
いかにミトウが裏で手助けしているからとはいえ、ちっと話がうまく進みすぎでは。まあ、「城に支配された世界」というのは背景であってそこからの脱却が主題ではないから省略されても仕方ないかな。まともに描くと長くなりそうだし。ハーヴェイがトナミを捕らえようとするとは、やや意外。ヤツカを失って荒れてますなー。でもヤツカがデミウルでなく普通の人間だったとしても、いつかは別れがやってきたはず……なんだけど、今のハーヴェイにそれを言っても無駄というものか。
[ 道男と克は同じ学校。克とテツさんはバイト仲間。3人はよく遊ぶ仲だったが、最近テツさんと克の様子がおかしいのに気づいた道男は……。 ]
カラー付き。
仲良し3人の中で1つカップルができるとしたら誰か1人あまるのが道理。余りかけたのは主人公の道男。でもテツさんと克の間もまだまだ流動的で。揺れはじめた道男の心情を描いて、なかなか雰囲気のある話。もしくは雰囲気しかない話ともいえるかも。これから、というところで話が終わっているので後編はもう少し動きのある展開を期待。
[ 高校からの腐れ縁で現在美少女エロ漫画家・万太夫の〆切間際の修羅場を手伝いに来た椎名京平は、行き詰まった万太夫からポーズをとってくれと頼まれるが……。 ]
力業が身上の櫻井キャラ(←決めつけ)、今回もヤッてくれてます。個人的にヒットだった台詞は「ボードにはいっちゃ…」。そりゃあ狭い部屋でデカい男2人がズンズンガタガタやってるんだから茶碗は鳴るし、サイドボードに頭も入ろーってもんです。その勢いや良し! 吉野屋での楽しげな様子も、仕切直しを要求する椎名とそれを快諾する万太夫も、爽やかでますます良し!! でもやっぱりあの原稿は書き直しが当然でしょう……。
連載の入れ替わりの時期なのかな? 何となく雑誌のカラーが変わりつつあるような気が。
[ たびたび仕事を組んでヒットを飛ばしている写真家の西岡と大手広告代理店の松川だが、冷静な松川と感情的な西岡はぶつかることも多くて……。 ]
巻頭カラー。
ぶつかることも多くて……というか西岡がただの我が儘な子供に見えて仕方ないのですが。それでも松川に組みたいと思わせるどれほどの写真を西岡が撮るのか、それをまず拝見させてもらわないことには話に乗れないっす。あと、人物の顎がツンと上がり気味なのが気になったかなー。
[ 外科研修医の中原葵は先輩研修医・津田への想いを指導医の寺岡君彦に知られてしまい、寺岡に抱かれるようになるが……。 ]
カラー付き。
去年2作掲載された病院ものの別バージョン(これって「指先」シリーズなのだろうか)。「名誉を傷つける危険を伴わずセックスできる相手がほしい」と言ってよりにもよって中原を選ぶ寺岡の心理が判りません(笑) 確かに口外や妊娠の可能性はないが、世間にバレたら一番ヤバい相手だと思うのだが。しかし脅迫的に抱いてるくせに中原に目一杯イイ思いをさせてる寺岡センセーってば紳士的なのですね。もっとこー中原に奉仕させるとか……ごにゃごにゃ。
「純粋でかわいい受キャラに初挑戦!」という作者コメントとは裏腹に、魅せる表情は主人公の中原より寺岡の方がずっと多いような気がする。(中原の顔で一番好きなのは、当直室から出て資料室に入る直前のぬぼーっとした顔だ(笑)) モノローグや台詞に頼らないでもっと絵で表せばいいと思うんですがのう。
[ 喧嘩したことを後悔して透の家を訪れたまさみ。しかしそこには透の昔の彼女が。しかも彼女はバスタオル姿で……。 ]
恋愛漫画に誤解ネタはつきものだけど、今回はまんま少女漫画というか……。その割には盤石の安心感の上に読み進めてしまえるのは何故。今更、まさみと透が別れるなんてカケラも思ってないからなァ。次号は大増80頁。いよいよ二人の関係にも決着がつくのでしょーか。
[ ニンジン嫌いの忍は、大好きな学食のご飯でもついニンジンを残してしまう。それを見た栄養士の加持龍也に呼び出された忍だが……。 ]
食堂のお兄さん×高校生(多分)
妙に可愛い24頁。見た目、忍と龍也の年齢差がもっとはっきりしててくれれば更によし。そして侮りがたし安井さん(←食堂のおばちゃん)。素晴らしい情報力に敬服。
[ 大学3年の馬場貴明はコンパの席で出会った1年の青山竜司に声をかけ、二人でその場を抜け出すが……。 ]
カラー付き。
二人の出会いから別れまで、貴明の独り語りで一気に駆け抜ける。が……「激しい雨」というよりは「流れる雨」という案配で、後に何も残らないぞー? 二人が同じ学校の教員として登場する蒼&圭吾シリーズを読んでればまた読後感も違うのかもしれないけど、あまりにもつるつる語り過ぎで、苦い後悔を含んだ追憶とか、偶然の再会による淡い期待とかネタはあるのに、あまり読者の共感を呼び覚まさない感じ。
[ 晴臣を盾に取られ宮本に関係を強要される葵一だが……。 ]
葵一にとって、唯一兄弟仲が良かったことだけが救いだったのだろうか。こういう過去を経てきたから、今の葵一は思い切り自由を満喫しているのですな(笑)
それはともかく、盛り上がっている――というのはよく判るんだけど、もうひとつ、はまれないというか。これはやはり蒼江の屋敷に連れてこられてからの晴臣に対する待遇の良さのせいだろうと思う。最初こそ「犬とヤるか全身に刺青か」なんて無茶を言われていたものの、その後は家人と同等の扱いで誰とも対等のクチをきいてるし、葵一はともかく晴臣についてはいまいち、今は何の力もなく喘いでいる――という像が見えてこないんだよなー。
[ 気持ちのすれ違いが続く萩原と艶夜。周囲にもぎくしゃくしている二人の様子が伝わってしまい……。 ]
艶夜&萩原シリーズ。
己を知らな過ぎるというか、もどかしいにも程があるというか。性分だから仕方ないのかねえ、萩原の場合。(しかし実際にはそうやって許してしまえるのは、彼に好感を持っている人だけではなかろうか。現実にいたら鬱陶しいことこの上ないぞ……。) いっそのこと艶夜と交換日記でもしてみたらどうだろうか。萩原の旧友で義兄でもある篠宮の登場でちっとは話も進みそうだけど、自分に直接気持ちを言わず、他にこんな相談をするような親密な仲の人間がいると知ったら、むしろ艶夜は根に持ちそうな気がしないでもない。
[ 残業中、屋上に人影を見た立花は様子をうかがいに行く。そこにいたのは中野という青年で……。 ]
中野が屋上にいた理由も、二人が恋に落ちた様子もごくあっさりとしか描かれない。これでは話として薄すぎるのでは……? 気まぐれな一夜の恋にした方がまだしもドラマ性が高いんじゃないだろうか。で、最初の夜は、たまたまあのビルのドアは施錠されてなかったのでしょうか。謎だ。
[ 呑気に眠る恋人の灯世(ともよ)に美容師の涼氏(りょうじ)が悪態をつくと、突然鏡の中から毒入りのスープや毒リンゴが差し出される。偶然目を覚ました灯世が毒リンゴを食べてしまい……。 ]
巻頭カラー。
実はその毒入りの食べ物を出現させたのはキューピッドで彼は彼なりの理論により涼氏と灯世の仲を取り持とうとしていたのだった……。という多分にファンタジックな筋立てながら、ドタバタした展開にならず落ち着いた雰囲気の話になっている。さらりと読み飛ばせば何やら物足りないものの、深読みしようとすれば思いの外、底が深そう。寓話的で妙に後に残る作品。
[ 左拳に特別な力を持つ陣内みどりの高校に俳優・神辰巳の息子、神野紫が転入してくる。神野は陣内の幼友達だと主張するが、陣内にはそんな記憶はなく……。 ]
前シリーズとはがらりと趣向を変えて、喧嘩っ早い陣内と訳ありげな神野の視線の強さが印象的。神野の言うことが正しいなら、何故陣内にはその記憶がないのか、そして一瞬だけ陣内の脳裡に浮かんだあの映像は何を意味するのか。話は始まったばかり。
[ 謎の多い店の構造に阻まれ、なかなかハッカに巡り会えないシナモン。一方、落とし穴から更に奥に引きずり込まれたジンジャーは、ドロップの管理係・ラオの元にたどりつくが……。 ]
新しい人物も登場して謎が謎を呼ぶ展開。ページ数が少ないのが非常にもどかしい。40頁ぐらい一挙に掲載してくれんものだろうか。そして、ハッカ(偽)を見かけて全力疾走してしまうシナモン……。オトコのお馬鹿さん加減、出力全開中です。
[ 幼い頃からゲイの自覚があった水井恭一は、入学したばかりの大学構内で彼を見知っている(そして嫌っている)ような態度の青年から声をかけられるが……。 ]
前作『俺様は栗である』で杉家三男の竹生に絡んでいた水井の大学入学後の話。
愚かにもタイトルにつかわれている「LUST」の意味が判らなかった私は辞書を引きました。結果。「1 (……に対する)欲望 2 色情,情欲」 なんちゅーダイレクトな。という訳で、話の内容の方も、集団の中の一員でいられた高校を卒業してややハードな展開をみせるのかな? それにしても、水井ってばフケツ……じゃなくて、相当早熟なタイプだったのですな。あと、些末事だけど「未成年の飲酒は法律で禁じられています」の注が入るなら、煙草についてもお断りを入れんとならんのじゃなかろうか。
[ 梅谷と離れたくないと思うあまり、梅谷の母に爆弾発言をかましてしまった清水だが……。 ]
母親から息子である梅谷を奪ってしまうこと、梅谷に親の期待する将来像を裏切らせてしまうかもしれないこと。親が出てくるともう二人だけの気持ちの問題だけではなくて、でもそんな罪悪感を覚えてもそれ以上に梅谷を自分のものにしたいと望む、清水の梅谷に対する思いが切ない。が、ちっとばかし生々しい領域に入ってきているかも。絵柄の影響が大きいのと、この作者の作り出す世界が妄想よりも現実に近いところに位置しているからなんだろうな。さてこれて梅谷母がどう出るか……なんだけど、その前に清水は実家に帰らなきゃならんようで。若いのに、そんなに何度も寸止めくらって大変じゃねえ。
[ 吹奏楽部の先輩・池田が部活を引退してしまい淋しさを覚える武島。そんな時、池田から電話がかかってくるが……。 ]
端正な絵柄だが、決してキャラクターの線は細くない。武島と先輩にはいつまでも音楽を介した間柄であってほしいな。ある意味青春期の勘違いのまま、清い仲でいて下さい。ラストの凶悪そうな先輩の顔がステキ(笑)
[ 人間形の時に徹太に「コイビトのキス」をしてもらってからというもの、麦太の悩みは深まるばかり。ついには兎のぬいぐるみから人間に変身できなくなってしまうが……。 ]
確かに麦太は可愛い。仕草も微妙にネジの飛んだ思考回路もぎゅ〜っとしたい魅力にあふれている。しかし、ぬいぐるみにマジになってしまう徹太はどうかと思う。というか、「兎のまま体中の(以下略)」ってアンタ……。本気か? 正気か? 大真面目なら是非そのマジなところを見せてもらいたかった。という訳で麦太が人間に変身できてしまってちょっと残念。(←オイ)
ISBNがついているのでアンソロジー扱いしているものの、掲載12作品中、実に10作品が連載で、実質季刊の雑誌状態なんだろうな。そう思うとべらぼうにお値段が高いけど……。でもこの路線が好きだから頑張って買いましょう(多分)。
[ 高度経済成長期時代の日本。とある屋敷に下働きとして入った葛城蓮は、そこで呪眼を持つ少年・真咲に出会うが……。 ]
巻頭カラー。
せっかく真咲が妖しい雰囲気をまとっているのだから、屋敷の内部等にも凝ってほしかったな。途中で葛城サイドからの描写がなくなってしまうので、真咲と葛城の心理的な位置関係がいまひとつ明確に伝わってこない。その上、さしたる起伏もないまま話が終わってしまうので、再三再四真咲が言う「おまえ、面白いね」の意味がよく判らない。確かに真咲の能力に気づいた葛城は今まで真咲がその呪眼と体で操ってきた男達とは異なる存在なのだろうが、真咲が陵辱されている様を幻視させられて葛城が嗜虐心を煽られるのでなく、むしろどちらかといえば被虐者に感応しているのは、それは真咲が葛城にそのようなイメージを見せたのか、それとも真咲が計ったことではなく、葛城が「本当に目がいいね」な性質だからなのだろうか。それで尚かつ、支配される側として欲情しているらしい葛城というのはかなりマゾ的なんだろうけど、どうも単純に「青年が抗いたがい少年の魔力に身も心も溺れていく話」と片づけるにはどこか捻れていてしっくりこない。もっとページ数をかけて、呪眼の及ぼす力についても詳しく織り込みつつ、二人の心理的な力関係をはっきりさせてほしい。あと、支配する方もされる方も同じような喘ぎ方では興がそがれると思うのだがどうだろう。
[ マンネリH打破を目論む恋人の孝に仕組まれて、不覚にも意識を失ってしまった克典。気がつくとベッドに両腕を縛り付けられていて……。 ]
元気者カップル。
二人とも下着はつけないオシャレさんなのね。でもって前を外そうが脱ごうがしっかり形を保っているおズボンはまるで鎧のようです。それはともかく、腰を動かしながら相手の乳首にピアスの穴を開けようとするのって危険じゃないのか?
[ コンビを組んで殺しを請け負っているミッジとラッシュ。とある電話を受けてからミッジの様子がおかしくなる。理由を尋ねるラッシュにミッジは街を出るよう告げるが……。 ]
35歳×25歳。
登場人物はどちらもデカいオヤジとニーチャンだが描線は意外なほど繊細。命をかけてもまったく後悔しない二人の絆を描いているが、失礼ながら単品ではちとインパクトが弱いかも。ラッシュの台詞の中に出てくる10年前の出来事編とか、あるいは実際に敵に回った組織幹部の殴り込み編とかとセットにすれば生きてくる話だと思う。
[ 主治医の田辺弘文に想いをよせる柏山英は、同居していた田辺が柏山家を出ていってからというもの、田辺に会うためにわざと自分の体に傷をつけていたが……。 ]
医者×坊ちゃん。
主治医を呼び出すために故意に怪我や病気を繰り返すのと、田辺の言う「やっぱり痛いと興奮するんですね…」というのは全然違うと思うのだが。どんな怪我だか判るなんつって田辺センセー、自分の願望入ってないっすか?
[ 妻子に出ていかれ荒れていた蓮島大気は、彫り師で不思議な力を持った凍上喜利に出会うが……。 ]
この話のためにこの本を買ったと言っても過言ではない。というか、まさにこの話を読むためにこの本を買ったのだ。ああそれなのに、何故に中編? チェックが甘かったなり。後悔先に立たずとはこのことか。前編が載ってるバックナンバー……注文しちゃおうかなあ。
かつて雑誌「アッシュ」に上苑原次春の名前で連載された『地上の鳥』の番外編。『地上の鳥』は基本的には大気の子供やその高校のクラスメイトの話で(多分)、途中、昔語りにかなり極道な仕業をしてのけた大気が描かれているが、『比翼の鳥』はそれより以前、医学生時代の大気の物語。見えるはずのないものが見える凍上の目を通して、大気の中にあって未だ羽ばたけずにいる翼の存在が語られる。32頁でかなり内容の濃い話になっているのはさすが。『地上の鳥』は未完のはずだし、ぜひとも『地上の鳥』の完結編をつけて、『地上の鳥』『比翼の鳥』まとめて単行本にしてください。
SM BOY'S LOVE ANTHOLOGY。とりあえず、縛られている人が多かったな、という感じ。それほどハード!って印象は持たなかった……のはワタシが汚れているからでしょーか。一番「SM」と感じた部分は表紙にある「華虐隷属SM扇情読本」という素敵な惹句かも。
雑誌に掲載された作品が「こりゃ傑作だ」と思われるようなものであっても、必ずしも単行本に収録されるとは限りません。ことに発表形態に短編が多かったり、そもそも単行本どころか雑誌自体の創廃刊が激しかったりするボーイズラブ系ではその傾向が顕著です。なので自衛手段として、雑誌を捨てる時には好きな作品や気になる作品は切り取って(というか、ぶち破って)保存しておくようにしています。または、いずれ単行本には入るだろうがそれまでのつなぎに取っておくケースなどもあります。しかし1冊2冊ならばたやすい作業も、うっかり冊数をためてしまうとどうにも億劫になって手が出しづらくなってしまうのもの。
が、そうして約3年分もの雑誌を溜め込んでしまっては、いかに面倒だといってもやはり「解体・処分」をせざるを得ません。他にも活字本だの漫画だのたくさん買い込んでる訳ですから、そのせいで床が抜けたりしちゃあ洒落になりませんしね。
そんな訳で重い腰を上げ、いざ分別を行わん、としたのですが……時の流れは偉大でした。私が雑誌を押入に突っ込んで放置している間に、チェックしていた作品の多くがコミックスとなって世に出ていたのですねー。おかげで殆ど無傷のままマガビー12冊(1999年分)をとりあえず捨てることができたのでした。不精者の粘り勝ちです。<違います
まあ、まだまだ2000年分のマガビーとか、1998年分からあるゴールドとか麗人とか山のようにあるんですけどね……。