「快感インビテーション」櫻井しゅしゅしゅ マガジン・マガジンジュネ・コミックスピアスシリーズ ISBN4-906011-69-1 C9979 \619E
[ 東証一部にも上場する業界最大手企業に仮採用となった藤島晴海。本採用試験合格を目指す彼の前に立ちふさがる大きな試練、それは2000種を超える自社製品を完全に理解することだった。だが株式会社宝裸は「大人のおもちゃ販売メーカー」。晴海は山積みされたバイブを目の前に途方に暮れるが……(『大きなバイブの舎の下で』)。他、読み切り6編。 ]
ガタイがよくてカッチリした絵柄の表紙に騙されるとイタい目を見るかもしれない一冊。
裏表紙に「抱腹絶倒」と書かれているが、それは「七転八倒」の間違いではなかろうか。一応普通の話も収録されているものの、とにかく『大きなバイブの舎の下で』『スペシャルケアだ、ばってん!』の2編があまりにもインパクトが強すぎて、その他の話の影が薄れてしまう。しかしギャグはギャグでも、情欲まみれのエロギャグではなく乾いた印象が残る。あくまで大真面目な顔をしながら、とんでもないことをやらかしてくれるからだろうか。ただ、内容はカッとんでいるが、会話のテンポが良くユニークなキャラクターが揃っているので、話そのものは読みやすい。絵も綺麗だし。この先どのような話を描いてゆくつもりなのか、作者の今後が気になるところ。最後の『世界プルルン紀行』はカラーで見たかったな〜。
「キスより吐息より」かぐやま一穂 ビブロスビーボーイコミックス ISBN4-88271-900-2 C9979 \562E
[ バイク便会社でバイトする瀬尾は、強面のライダー・神崎が実は自分に好意を持っていると知る。それからというもの、神崎をトイレに連れ込んではイタズラを仕掛ける瀬尾だったが……(『鋼鉄のくちびる』)。描きおろしを含むその他6編。 ]
上記他、従兄弟同士、高校生×保健医、後輩×先輩などなど格好いいお兄さんたちが濃いめのエッチを展開。あまり年齢差のないのが多いものの、オール年下攻め。
ストーリー的には結構切ない話もあったりして、激しいエッチシーン多発でもヤるだけ漫画では終わっていない。ただ、割と、切って落とす風のラストが多いんだけど、もう一つ府に落ちなかったり余韻が欲しかったり盛り上がりが足りなかったりするので、濡れ場を押さえ気味にして心情描写に回した方がいいんじゃないだろうか。全般的に、あと1〜2枚あれば……という印象なんだな。もったいないと思う。
それにしても初コミックスで、一ヶ月後に増刷がかかるとはたいしたもんです。
[ 弘の原稿終了後、打ち上げに出かけた弘と神楽・田辺の三人。酔いが回った頃、神楽のもとに篠崎から電話が入る。そして酔っぱらった弘は送ってくれた田辺にちょっかいをだし……。 ]
巻頭カラー。
51頁で、アシの投稿作品を盗作した篠崎の心情説明、篠崎と田辺の和解、神楽と弘の目隠し縛りエッチ、とよどみなく読ませる手際の良さはさすが。ところで、弘のアパートって防音大丈夫なんだろか。一晩に男二人とそれぞれよろしくやってるのが隣近所に丸聞こえなのでは……。ついでに、篠崎が寝てたのって神楽のマンションのベッドだよね。……他人ちの布団でナニをする気なのかね、君達。そいでもって、篠崎以外の男に惚れたことはない、なんて言ってる野郎がいくら相手から迫られたからといってその気になるもんだろうか。あと、弘って田辺が神楽のマンションに到着し入れ替わりに神楽がアパートにやってくるまでの間、ずっと裸でいたのか? それって神楽にヤッて下さいと言っているようなもんじゃないのかね。
[ 従兄弟の怜に突然キスされて動揺する暁だが……。 ]
いつどうして怜が暁のことを好きになったのか全然判らないので、話に入り込めない。過去のいきさつを仄めかすのは読者の気を引く常套手段だけど、そんな描写も見あたらないし、読んでいてツライ。まだまだ続きがありそうなので、これから怜の心情が明かされることを切に願う。
[ 突然両親を失い、泣いている幼い悟の前に現れた謎の男。八年後、男は兄を亡くした悟のもとに再び現れる。そして更に数年後……。 ]
カラー付き。
『時をかける少女』ならぬ時をかける少年。不思議なのは、どうして甥っ子の数馬が時を遡って悟のもとに現れることができたのか。それを元に数馬サイドからももう一本話が描けそう。ただ、ずっと悟の視点で話が進んできたのに、突然数馬の心情(モノローグ)が書かれているところがある。数馬の気持ちを説明したいのは判るけど、読者の感情移入先の焦点がボヤけるので(悟が受けた衝撃がよく伝わらない)、悟の視点で通した方が良かったんじゃないかな。
[ タイに行くと入谷に告げる木津。出発日前日の連絡先を入谷は破り捨てる。そして会わないまま三ヶ月がたち……。 ]
いよいよ大詰め。入谷の顔の傷が、時々涙の流れた跡に見える。入谷はどうやって木津の居場所を知ったんだろう。成田空港近辺のホテルに手当たり次第に電話したんだろうか。で、入谷からの電話が切れた後、部屋を飛び出していこうとする木津が「思わず」って感じでいいね。というか、余裕有りげに見えてもまだまだ若いってことですか。そういえばケータイに飛びついてたし、いつの間にか「入谷」が「鉄央」になってるし。しかし、どうしたんだ良太、そんなに物わかりがよくなっちゃって。
[ 騙された紫希は薬を飲まされ、乱暴されそうになるが……。 ]
うう〜ん、絵が怖い。紫希って親がいないっていう設定だっけ? ああいう場合、親元には連絡しなくていいの?
[ 馬堀、風子と過去に関わりがあった人たちを訪ねる椿。一方、苦悩する馬堀はとうとうハルを押し倒すが……。 ]
マホリン玉砕の巻。マホリンも回ってるけど、ハルもかなり回っているような。同情されたと思ったのか。一体どうしてほしいのかなあ。こういう場合、声がデカイ方の勝ちって気もする。それと、とても謝っているようには見えない態度だ、椿。
[ 今はリングドクターの眉村がその昔、偶然かいま見たキディポルノの撮影現場、そこにいたのは……。 ]
カラー付き。
桧山南サイドの人間模様を描くBloody Angel編。
犯されビデオを回されながら、しかし笑っている子供時代の南――ってショッキングな場面なのに、肝心の南の表情がイマイチなのが残念。冷酷でも妖艶でもいいけど、もっと鮮烈な描写をお願いしたい。それから素朴な疑問がひとつ。周囲の人々の髪型もなかなかユニークだけど、ボクサーがあんなに長い前髪で、試合中邪魔にならんのだろうか。
[ クールなアツシの気持ちが掴めず不安になるハルキ。寝言でオンナの名前を呼ばれて……。 ]
巻頭カラー。
カノジョと思ったら実は母親だったというベタな展開はさておき、それにしてもハルキもナーバス過ぎんかね。恋愛初期は手探り状態なのは判るけど、寝言で名前呼んだとかナニの最中に電話に出たとか、ただそれだけでアツシ本人に探りも入れんで一歩引いてしまうとは、そんなことではこの先何も手に入れられんと思うがどうか。しかしまあ、結局は両思い成立でめでたし。しかし……、B5版見開きでの69はキツイっす。
[ 捨て猫を拾った裕介は、母親に叱られ引き取り手も見つからずに途方にくれる。そんな時、近くに住む大学生の譲が通りかかって……。 ]
猫を飼う交換条件に……なんて如何にも濡れ場を描くためだけの話のようだ、と思ったものの、鼻息を荒くしない譲が結構いい感じ。何かこう、スローペースでじわじわ描いてます。で結局本番はナシ。それはいいんだけど、ラスト、鋼のようなガキんちょぶりを発揮してくれた裕介の言葉にドカンと疲労感が。哀れなり、譲。更に裕介が16才と判ってダメージ2倍。てっきり小学生かと……。それとトーン重ね張りする前に、煙草がきちんと煙草に見える画力をつけて下され。
[ 今日も今日とて渋谷界隈でダベる常盤賢一と清洲春彦だったが、先輩の森口の「渋谷を卒業する」という言葉に衝撃を受ける。そんな時、何者たちからか逃げてきた少年に助けを求められる。またしてもトラブルの予感……。 ]
カラー付き。
青春のこっ恥ずかしさを見事に再現した話。若い頃って、本当は狭い枠の中にいるのに、そこでいきがったり天辺に立ったつもりになっていたりするんだよね。
[ 響は親友の俊哉と自分の彼女がキス以上のことをしているのを見てショックを受けるが……。 ]
響のことが好きでその彼女に手を出してしまったり、勢いあまって響を押し倒してしまった俊哉の気持ちは判るが、肝心の響の気持ちが謎。いつの間に俊哉に恋愛感情を持ってたことになってるんだ。じゃあ彼女の存在は? セリフ上のオチは決まってるけど、それまでの話とラスト2枚がうまくかみ合っていない感じ。
[ 桐原涼司と譲は三年の付き合い。身も心も深く結ばれている2人だったが、ある日、譲の態度が急変し……。 ]
カラー付き。
ズバリ双子ネタ。譲と瓜二つの衛の登場でおおよその展開は察しがつくけれど、この話ではそれは全然気にならない。衛が涼司を強引に抱いた後の汚れたシーツがリアルでグー。涼司と護・衛の3人でのセックスシーンは、まるで合わせ鏡か万華鏡の世界に入り込んでしまったような錯覚を感じさせる。ただ〜、涼司のメガネだけは外させてほしかった……。あれで俯せになったりしたら、かなり邪魔なので普通メガネ外すと思うのだ。
[ 紅磁(こうじ)が月桜(つきお)を初めて抱いたのは15の時。それから10年後、紅磁にしか関心を寄せない月桜の気持ちが紅磁には重く感じられていた。そんな時、紅磁が取引先のOLと付き合っているのが月桜にバレ……。 ]
突然、月桜からの電波を受信してしまう紅磁が判らない。それに彼女を傷つけたのは月桜じゃなくて、紅磁の不可解な言動じゃないのか? ついでに言えば、彼女に対してはまだどうにでも取り繕いようがあると思う。別れ話を切り出しながら相手を抱き寄せてみたりするし、結局、「オレはまた月桜と別れられなかった」んじゃなくて紅磁が月桜と別れたくないんじゃないの? 月桜の行動の方がよっぽど筋が通ってるぞ。
[ 鴉丸壱京の兄、親正が夏休みに彼女を連れて実家に戻ってきた。その夜……。 ]
巻頭カラー。
今回は番外編だけど、全体に話が右往左往してよく筋が判らない。それと、何となく見づらい絵だと思ってよくよく考えたら、線が途切れ途切れだったり継ぎ目が滑らかでないのが気になるのだった。微妙なとこにひっかかるもんですね。
[ 背中に羽を持つ少年、光は幼い頃父親に言われた言葉にひどく傷ついていた。10年後、光は登校途中に一人の少年と出会う。天真爛漫なその少年は、自分は犬で生き神様に人間にしてもらったと語る……。 ]
光の羽を見て「それは誰にも見せちゃいけない。誰にも言っちゃいけない。そんなものは」と父親は血相を変えたけど、それは決して光を嫌悪した訳じゃなく、父親にも同じような羽があって、それを知った他人に気持ち悪がられたりしてずっと苦労してきた、だからそんな苦労を光にはさせたくなくて人には見せてはいけないって言ったんだよ。……っていうのはダメ? ドリーム? だってラストの、街角でうなだれる父親が可哀想だったんだよ。きっと家を飛び出した光のことを心配して追いかけてきたんだよ〜。
[ 母かすみの一周忌を前に、竹生と桂は実の両親の存在を思い出す。育ての親からは二人とも死んだと聞かされていたのだが……。 ]
シリーズの途中から読んでいたので、杉家の四人兄弟のうち下の二人は父親の妹夫婦の子だったとは、今まで知らなかったよ。実の母の蘭子が思いも寄らぬ登場の仕方をした時、年上の竹生が桂を気遣って肩に手を置く、そんなさりげない描写が好きだなあ。
[ 両思いの手前でうろうろしている梨本と東海林。二人がくっつくかどうか賭けている悪友共の思惑も絡んで……。 ]
ルチルvol.3『SONIC BOOM』続編。
若さ暴走タイプの話が横行する中、20年先のことを考えて、敢えて梨本に対するドキドキする気持ちに名前をつけようとしない東海林が、なかなか堅くてよい感じ。相当乙女入ってるけど。ただ、以前読んだ話が台詞の少ない、割と淡々とした話だったので、説明的なモノローグにちょっと戸惑い気味。この話はコメディタッチだからかな。
[ シナモンがハッカを消さぬまま二晩目の夜が過ぎた。離ればなれになった2人は必死に相手に会おうとするが……。 ]
不愛想元軍人vs酷薄店長の巻。シナモンはともかく、あの店長があんなに強いのは何故なんだろう。得体が知れない人だ。それにしても、ハッカに対する執着をああも堂々と口にするシナモンって実は結構恥ずかしい人なのでは……。さて、次回はいよいよドロップの秘密が明らかになるか?
「オール新作読み切り」となっているけど、実質連載ものが半数を占めてますね。書籍扱いなので、バックナンバーを見つけるのは簡単でいいけど、値段が高いのがねえ。位置としてはかなり少女漫画寄り。ところで、前回掲載予定だった西崎祥はいったいどうしてしまったんでしょうか。他社からのコミックスも2度目の発売延期になっているし……。
「セミ・シングル 成層圏の灯」鳥人ヒロミ ビブロススーパービーボーイコミックス ISBN4-8352-1024-7 C9979 \571E
[ 卒業・就職の時期を迎えて、喜瀬川の気持ちや才能が重荷になり始めた佐伯は、実家に帰ると喜瀬川に告げ、距離をとろうとするが……(『愛と嘘つきの夜』)。成層圏の灯シリーズ2編及び、読み切り1編。 ]
佐伯と喜瀬川の関係を丁寧に描くこのシリーズ、「大人気シリーズ」なんて裏表紙にも書いてあるのに、一冊目の『成層圏の灯』が絶版だなんて勿体ない話だ。雑誌やこのコミックスのあとがきに同人誌版通販の告知をしているってことは、出版社ではもう増刷するつもりは全然ないってことだよね。確かにぽつりぽつりと発表されているシリーズだけど、時間をかけなければ描けないものもあるだろうし、出版社側も短期間で大量に売り切ってしまうのではなく、いいものはしっかりフォローしてゆくような態勢作りをお願いしたい。
で、お話。『年上のひと』では、たとえとして桜を使った染色の話が出てきたけど、『セミ・シングル』では同性愛者を深海魚になぞらえている。漫画は絵で語るものであり、概して文章として挿入される言葉は「説明的」と鬱陶しがられるが、説明ではなくむしろよりイメージを膨らませる手段として、この作者は言葉の遣い方が上手いと思う。ただこの作品に注文をつけるとすれば、キャラクターがあまりに華奢で、せっかくの濡れ場も色気より痛ましさすら感じられること。もう少しお肉をつけてやって下さい。
しかしねー、喜瀬川から離れようとする佐伯の気持ちも判らんでもないですね。あんなふうに何もかも捨てて縋られてしまったら、嬉しく思うどころか、むしろ後ずさってしまうのも無理はない話で。まだ佐伯の方が年上だったら何とかなるんでしょうが、同い年でしかも就職シーズンなんていう不安定な時だし、喜瀬川も不安なんだろうけど、知らず知らずに相手を追いつめているということを自覚した方が後々のためではないかと思います。だけど佐伯も、唯さんに「ああ……いい肌だ。美味え」なんて言ってヤッちゃってからに、今更喜瀬川に「オレは違ったんだ」なんて言ったって説得力ないよ、君。
結局、唯さんはどうなっちゃうのかな。穏やかないい人なんであまり傷つくような展開にはならないといいんですが。
あと、喜瀬川もおっそろしい目で紙袋を値踏みしとりましたが、復縁を懇願する喜瀬川を見おろす佐伯の女王様的眼差し。あれがこの作者の真骨頂だと思ったり。
ところで『愛と嘘つきの夜』1ページめの佐伯って、あれで窒息しないんでしょうか……。
「微笑みの日常」直野儚羅 竹書房バンブーコミックス麗人セレクション ISBN4-8124-5291-0 C9979 \562E
[ 強面で、職場でも周囲に一歩引かれているチーフの岩切は、新人の麻生の笑顔に好感を持つ。親しくなった二人は、ある晩ついに一線を越えてしまうが……(『微笑みの日常』)。描きおろしを含むその他6編。 ]
このコミックスに収録されているのはそうでもないけど、ちょっと変わった設定の話を描く漫画家さんだという印象がある。そのせいかどうか、微妙にツボがズレているような感じで、読後欲求不満に陥ってしまうことが……。世にワンパターンな話は多いけれど、やはり感情移入し易いからそんな設定が多用されるんだな。あとキャラクターがモノローグでも敬語をつかっているような感じのする(実際にはそうではない)品のいいところが違和感の原因かもしれない。
収録作品の中では、『日向』と『微笑みの日常』がお気に入り。『日向』は両親から虐待を受けてきた少年の話。表題作でもある『微笑みの日常』では、感情を高ぶらせた麻生が泣きながら岩切に告白する場面がイチオシ。で、岩切さんに前よりも後ろの方をねだる麻生くんは本物なのね、と思ったり。
それから『東にある宇宙(うみ)』というのが、濡れ場一切ナシのファンタジックで綺麗な話――なんだけど、ごく一部、個人的な事情で浸りきれなかった部分が。一コマだけ他の漫画家さんが描いたところがあるんだけど、そこに描かれている人物がとある漫画に出てくる人物にそっくりで……ああ。
あと、コミックスの表紙は薄塗りに、との指定が編集部からあったらしいけど、なんて間抜けな指示かと思うよ。漫画家の持ち味を活かせなくてどうするんだ。
通して読んでみて、コミックスのタイトルは“微笑みの日常”だけど、翳りのある表情の方が魅力的なような気がする。しかし一番「こ、これは……」と思ったのは、『日向』に出てくる許斐奨一さんでした(中年やもめ一児有り)。優しさの中に秘められた鬼畜な表情が〜〜。もっと描いてください、オヤジ。
「夢に飛ぶ鳥」直野儚羅 竹書房バンブーコミックス麗人セレクション ISBN4-8124-5368-2 C9979 \562E
[ 服飾デザイナーの吉野総一郎は、ちょっとした誤解から恋人の加藤雄護と喧嘩したまま交通事故に遭ってしまう。しかし総一郎が気づいたのは、自室のベッドの上だった。日付が2日前に戻っていることを知った総一郎は……(『夢に飛ぶ鳥』)。商業誌未収録作品を含むその他4編。 ]
ところどころリアルに流血している場面があって視覚的な刺激が強い。傷口や血の流れる様子がえらく具体的だし――というか、人体の一部が欠けていたり壊れていたりする絵を描くことにあまり抵抗がない漫画家さんなんだろうなと思う。その点は心の準備をしておいた方が吉でしょう。
全体的にストーリーそのものはハッピーエンドベースなんだけど、ただ、攻が誤解から強引な行動にでる話が2つ続いたので、なんのために言葉があるんだと言いたくなったりもする。確かに余計な言葉はトラブルの元だけど、自分の気持ちを相手にきちんと伝えずにそのくせ勝手に勘違いして相手に乱暴するってのは、恋だの愛だのいう前の問題じゃないのかね。このコミックスに限らず、最近ボーイズもの全般にそういう傾向が顕著なような気がするなあ。
『真夜中の太陽』は『日向』(コミックス「微笑みの日常」収録)の続編で同人誌で発表されたもの。既に読んでいたけど、やはり鬼畜なオヤジは良いオヤジ。温厚そうな表情を裏切って一瞬見せる酷薄な目つきが、本当に本人の言う通り「ひどい男」なんだろうなと思わせる。こういう視線を描ける漫画家さんって貴重じゃないかな。
あと、タイトルの付け方がセンスあると思う。