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2001.05.01 (Tue)

[雑記]矢追さんの思ひ出 なれそめ

 自分語りコーナー。お暇な方だけどうぞ。
 当方ババァにつき、記憶がかなりぼやけてきていますがどうぞご寛恕くださいませ。

最古の記憶

 初めて手にしたJUNE系の本は、かの有名な竹宮恵子『風と木の詩』でした。
 小学生の時分、偶然にコミックス(当然小学館フラワーコミックスだ)の一冊を近所の本屋のすみっこで発見。漫画もあまり読まず、勿論「少年愛」なんて言葉も知らなかった当時の私が、いったい何を考えてその本を手に取ったのか、今もってそれは謎。内容は、ジルベールがボナールに強姦されオーギュストに初めて抱かれる巻でございました。今でこそ局部描写なんぞ珍しくもないですが、大昔の作品ではエッチシーンは直接ブツを描かずに花などで代用されることが多々あり、この巻でもオーギュ×ジルベールの場面では大輪の花が咲き誇り、その中心部からは蜜が流れ出ていたりして淫靡な雰囲気を醸し出していたものであります。それを読んで「こういう世界があったのか!」と熱を出すような大ショックを受け……ると話は盛り上がってくるのですが、そんなことはなく、しかしこれといって違和感、嫌悪感も持たず、何というか、すんなり受け入れていたような気がいたしますねえ。そしてこっそりその本を買って帰った(そして何回も読み返した)わりに、前後を読もうとしなかったのがまた不思議なところ。通しで全部読んだのはそれからかなり後の話になります。その時、かの有名な台詞「憎しみで人が殺せたら!」の出典が『風と木の詩』だったことも初めて知ったのでした。とは言いながら、小学生時代に、掲載誌である「週刊少女コミック」を読んでいた友達が、風木を「気持ち悪い漫画」と言っていたのが、表面上は「ふーん、そうなんだ」と応えながら、内心「まあ、あの内容だし嫌いな人は嫌いだろうな、仕方ないか……」とちょっと淋しく思ったのを覚えています。やっぱり当時からJUNEもの、男の子同士の恋愛ものが好きは好きだったんでしょうな。

初めての「JUNE」

 漫画初体験は『風と木の詩』。では小説のファーストコンタクトはどうだったかというと、こちらは中坊時代に読んだ吉原理恵子『幼馴染み』です。当然、文庫化されたものではなく小説JUNE4号(だったと思う)掲載版であります。これが実にねっとりこってりな文章で書かれてまして。ネタも下克上もので濃ゆさ倍増です。この小J4号掲載作で他に記憶に残っているのが、よるのはせお『レファーレン物語 マナーマの夜』(イラスト/道原かつみ)。初めて読んだJUNE系小説は、と言われてまず思い浮かべるのが『幼馴染み』、次いで『マナーマの夜』という感じですね。で、何故にこの号を買ったかといえば、恐らく、たまたま目についた竹宮さんの表紙につい手が伸びたのだと推測されます。そして、ここから私の「JUNE」歴(ジャンル名ではなく雑誌としてのJUNE)が始まったのでした。
 さて、ちょっと番外っぽくなりますが、JUNE系作品の存在そのものにはさほどびっくりしなかったのですが、別の地点に驚きは存在していたのでした。氷室冴子『雑居時代』の登場人物に大学院生の山内鉄馬という同性愛者が出てきまして、多分彼が、私が一般小説で初めてお目にかかったホモキャラです。この話はやおいではなく、よくできたコメディタッチの少女小説なのですが、主人公の美少女「倉橋さんちの数子さん」がキッツイ性格で、彼に向かって「何年、ホモやってんのよっ。純情ぶりっこのホモなんて、カマトト女より、まだクサイわよっ」なんて言っちゃう。この話を読んだ時は「こ、こんなにホモをネタにしていいんだろうか」と、むしろ読者の私の方がびくびくしてしまったものでした。

持つべきものは

 類は友を呼ぶといいますが、やはり年輪を重ねた言葉には真実が隠されているものらしく。きっかけは忘れましたが、高校時代には少数の友人同士で「JUNE」を貸しつ貸されつするようになっておりました。まだ出版元がサン出版であり、交互に発売される「JUNE」「小説JUNE」を「大JUNE」「小JUNE」と呼び慣わしていた頃のお話です。
 ……それにしても本当に、本格的に「JUNE」を購読し始めた頃や、友人同士で回し読みをするようになった経緯だとかがキレイに記憶から吹っ飛んでますなー。その後知り合った人と、「こういうの好きなんですよ」「いや実は私も」なんてニヤリと笑いあったのとかは覚えてるんですが。
 それはともかく、高校時代に話を戻して。
 ある日、友人某が教室でこっそりと紙袋から取り出したもの……それは。尾崎南『小次郎貫通式』。あまりにダイレクトかつインパクトのありすぎるタイトル。内容は推してしるべし。アニメや漫画のパロディ作品は「OUT」や「アニパロコミック」などを通して知っていたものの、この本は今までに読んだパロディ作品の印象をすべてぶっ飛ばすような強烈な一冊でございました。
 これが初めて見たやおい同人誌なのですが(健全な同人誌は既に一冊ばかし持っていました。それもC翼)、しかし、何故かその本はオールコピーだったのですね。後から考えるに勿論、原本はオフセットなのです。友人がどういう経路でそのコピー本を手に入れたものか詳しくは知らないのですが、全頁コピーを取るくらいなら普通に通販した方がずっと面倒が少ないような気が……。当時もそのことを不審に思ったのですが、何せこちらは貸してもらっている立場でありますから、多くは問わずにありがたく借り受けて読ませて貰ったのでした。(うう、関係者の方、すみません)
 後に、この友人から「さぶ」なども見せて貰いましたが、雑誌に付箋がついていたので何だろう?と皆でページを繰ったところ、男性のフンドシ姿の素敵な写真がこれでもかとばかりに掲載されている箇所で、当人に付箋添付の理由を問いただしたところ、「そこは見ない方がいいと思ったから、目印に付箋つけといたの」。……そういうことは先に言っといてほしいものです。

総括

 何だかんだいって、血気盛んで好奇心なお・ト・シ・ゴ・ロな時期は、押し隠した恋心だの葛藤だのいう精神的な関係、じわじわ効いてくる色っぽさより、判りやすいHシーンに目を奪われがちだよなあ……と己が記憶を振り返って思いました……。あと、学校にJUNEだの同人誌だの持ってくるな!とか。しょーもない。
 ところで、なれそめって「馴れ初め」って書くんですね。慣れ始め……。なんか意味深(笑)

 以下、「矢追さんの思ひ出 商業誌編」「同 同人誌編」に続く!(予定)

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2001.05.02 (Wed)

[感想]「甘く愛して切なく抱いて」 梶本潤

『甘く愛して切なく抱いて』梶本潤 光彩書房光彩コミックス ISBN4-87775-075-4 C9979 \600E

[ 医学生の陣内恵は、条件の良さに惹かれて住み込みのバイトを始める。雇い主は同じ医学部で博士課程の井上徹。無口で強面の徹だったが、不思議と居心地の良さを感じていた恵は好奇心から徹と身体を重ねてしまい……(『甘く愛して切なく抱いて』)。他読み切り3編+描きおろしショートショート2編。 ]
 基本的に登場人物は20才以上。(1編だけ高校生が出てくるけどあまり16才に見えない……) ぼかしなしの直接的な性描写が多いがエロエロムードの話ではなく、惚れた腫れたのラブラブストーリー集でもなく、最初は愛のない、少なくとも真実の恋人同士ではないカラダの関係から始まった二人が次第に心を開いてゆき――という流れの話が収められている。(『君が微笑む瞬間』を除く) どちらかと言えばアダルト向けか。セックス描写は激しいが、性欲よりも、根底に相互理解への欲求と愛情を感じさせる話が多く、作者はボーイズラブというよりJUNEの王道をゆく人なんだろうと思う。
 収録作品の中では表題作の『甘く愛して切なく抱いて』が一番の気に入り。様子のおかしい恵に気づいた徹が、ちょっと間を持たせつつ恵の気持ちを聞いてゆく場面が良かった。その後に展開される気持ちの通じ合った二人の優しいセックスシーンには、今までの対比としてもう少しページを割いてほしかったなー、と思ったり。
 登場人物たちがその年齢にしてはリッチなのは、まあお約束なんでしょうな。

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2001.05.04 (Fri)

[感想]「プライベート・ジムナスティックス」1 藤たまき

「プライベート・ジムナスティックス」1 藤たまき 新書館Dear+COMICS ISBN4-403-66035-5 C9979 \552E

[ スケートクラブ里谷SSに通う桜井甘夏(カンナ)。国内ではジュニアのトップクラスにいたカンナだったが、カナダからやってきたセラの滑りにスランプに陥ってしまう(『プライベート・ジムナスティックス』)。他シリーズ2編収録、以下続刊。 ]
 フィギュアスケート選手を志す少年達のスケートと恋を巡る物語。
 大抵の話は登場人物と同じ平面に立って物語の進行を眺めているような感じがするのに、この話には俯瞰的な視線の印象を持ったのは、多分、カンナの年の割には冷静で客観的な性格のせい。セラのことは好きだけど、恋愛ばかりに夢中にはならない。己の分をわきまえていて真面目、でも堅苦しくはない。カンナって結構めずらしいタイプのキャラクターじゃないだろうか。それでいてお綺麗な子供ではなく、セラとの身体的接触により沸き上がる欲望を持てあましていたりもする。なかなか描くのが難しそうなキャラだけど、作者は、カンナのとまどいやセラの熱愛ぶり、また彼らを取り巻く周囲の人々をも丁寧に描いている。いつか立木やアンディの若かりし頃の話も是非描いてほしいもの。
 しかし、同じスケートクラブの女の子達に、女の子友達扱いされてしまうカンナって……(笑) 雑談めかして立木コーチにセラとのことを相談した時の「早いですかねぇ…」という、ため息のような呟きに年寄りじみた疲れを感じてしまったのだけど。苦労してますねえ。
 あと、この作者の絵柄はどこかファンタジックで、日本を舞台にしていても外国の話のような感じがする。このシリーズも不思議な無国籍風の雰囲気のある話になっていると思う。

[メモ]「煩悩ゲームの世界 女のコにしか見えないゲームワールド」

『煩悩ゲームの世界 女のコにしか見えないゲームワールド』鈴木純平 キルタイムコミュニケーション ISBN4-906650-86-4 C2076 \950E

 『煩悩ゲームの世界』という本がなかなか面白かったです。

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2001.05.06 (Sun)

『サイレント・キラー』 新田祐克

[ スケジュールの都合でろくに話も出来ない岩城と香藤。その隙をつくように岩城はマスコミに臨時マネージャー浅野との“浮気現場”の写真を撮られてしまう。しかし実はそれは自分の売り込みを図る浅野の策略で……。 ]
 巻頭カラー(4C+2C)。
 春を抱いていた・18。
 ええっと……、岩城さんってこういう人だっけ?というのが第一印象。なんかすっかり乙女な性格におなり遊ばしたようで、ちとビックリいたしました。香藤はもともとキテレツ乙女なところがあったから何があっても今更驚かないんだけど、岩城さん、今回純正乙女になっていましてよ? それにしても外には取材陣が張り込んでいるというのに、家の中では寝室どころかリビングでガッツンガッツンと(しかも朝まで……)、想像するになかなかシュールな情景ですなあ。そして利用するつもりがいつの間にか岩城に惹かれはじめていたらしい浅野くんは、今後改めて香藤にライバル宣言するのか、それとも岩城ファンとなり香藤との間を温かく見守ることにするのか、どっちだろう。
 本筋とはまったく関係ないが、マスコミ報道場面などでは適当な新聞記事の見出しだけ差し替えるというのが多いのだけど、この話ではスクープ記事がちゃんと捏造(笑)されていたのが良かった。ただ実際は雑誌にしろ新聞にしろ、あんなに字詰めされてるかなあ? ツーショット写真が大きく入っているのが普通じゃなかろうか。

『未来の記憶』前編 国枝彩香

[ バーで、プロポーズの返礼に彼女からグラスの中味をぶっかけられてしまった熊谷健人は、隣席の若い男とヤケ酒を飲んでいるうちに何故かベッドを共にしてしまう。翌日、その若い男・香月瑛が新しい同僚だと判り……。 ]
 カタブツ教師×クセ有りゲイ教師。
 熊谷と香月それぞれの事情をほろりとくるエピソードを交えつつ語る話運びはさすがに上手い。その割りに萌え心をあまり刺激されないのは、やはり熊谷のいかにも真面目で融通がきかなそーなルックスのせいではないだろうか。(熊谷のじーちゃんの方がよっぽど色気があるような気がする) 香月の死んだはずの恋人(?)、裕司ものーてんきそうなおっちゃんタイプで、もちっと二枚目を配置してくれてもよいのではないかと思うんだけどなあ。

『ぼくときみの距離』 みなみ遥

[ 知り合って間もない蘇芳と奥津。年上の男との付き合いを蘇芳に見られた奥津は、蘇芳とセックスフレンドのような関係になってしまうが……。 ]
 カラー付き。
 大学生もの。
 キャラクターに美少女エキスが注入されているらしく、殊に奥津が時々ボーイッシュな女の子に見えたりもするけど、綺麗な絵です。本当は蘇芳のことが好きなのに成り行きでセフレじみた関係になってしまい、言葉に詰まった奥津が泣き出してしまう場面、“あ…マズイ、別のものがでた……”という内心の呟きが妙におかしくて笑うシーンじゃないんだろうけど思わず笑ってしまった。結局、2人とも本心を押し隠していたことが判って前半のクールな様子とは裏腹に焦りまくる様子がこれまたおかしい。んでもって可愛い(笑) 蘇芳バージョンでも一つ話ができそうですな。でもラストのキスシーンといい、やっぱり奥津の方が一枚上手かなー。

『P.B.B.(プレイ・ボーイ・ブルース)』 鹿乃しうこ

[ 菱谷忍にスカウトされてホスト業界に入った安芸純佑は、ホストクラブを辞めてしまった忍の後を継いで今では指名率トップの座についていたが……。 ]
 カラー付き。
 00年8月号掲載『GATENなアイツ』に脇役で出ていた菱谷忍がこちらでも登場。ホスト現No.1×元No.1。とはいいながらキレイなだけのお兄さんの話ではなく、双方とも結構オトコ入ってます。時折見せる忍の醒めた表情にそれ以上踏み込むのをためらいつつも、それでもあえて“地雷原”に突っ込んでゆく純佑のヤケっぱち気味の横顔が格好良い。だけど……、うーん、セックスシーンはちとキツかったかなー。愛がないという訳でもないんだけど、いろいろ言葉で飾り立ててもその行為自体はあまりお綺麗なものでもないよ、というのが見えてしまうというか。ラストは意外な展開でございました。

『接吻修行』前編 紺野けい子

[ 幼馴染みの菊原晴司と水野大剛。薄々互いの気持ちに気づきつつ就職しても付かず離れずの2人だが、大剛の先輩・杉本が晴司にモーションをかけてきて……。 ]
 社会人で幼馴染みもの。
 通りを隔てた互いの家で、相手を思いつつ自慰にふける2人……。って、君らホンモノね〜、とっととくっついてしまいなさい、と思うことしきり。現状にあまり不満を感じないから今の状態で止まっているけど、多分、何かきっかけなり後押しがあればすんなりと恋人同士に移行しそう。そのきっかけになるのが杉本先輩か? 哀れなり。
 で、2人のオ○ニーシーンを見て感じたのだけど、ボーイズラブ漫画の作風の変遷の一方向にリアルな世界への接近というのがあると思う。葛藤絡みではなく自然に同性に惹かれる男性キャラ、不自然に排斥されることのない女性キャラ、大らかに表現される性欲。この作者はその波の最先端にいるような気がする。

『それを言ったらおしまいよ』 よしながふみ

[ 高校からの腐れ縁で売れない作詞家・深海崇に、時々食料を調達してやっている渡瀬耕平は親からの圧力に負けて見合いをすることになるが……。 ]
 カラー付き。
 元同級生で医者×作詞家。
 予告時では『まるで天使の歌』だったのが、何かスレたタイトルになってしまったなあ、と思っていたのだけど、コトが終わった後の崇の表情を見たら非常に納得してしまった。崇って、抜けてそうで案外やり手かも。やっぱり耕平の目には恋のベールがかかっていると見て間違いないようだ。少なくとも、その気がなければ直行でナニにかぶりついたりはせんだろう……。あと、耕平の両親の息のあったダブル口撃が、とても怖かったです。

『成層圏の灯 幾千の言葉より』 鳥人ヒロミ

[ 上海で再会を果たした佐伯と喜瀬川。だが仕事が忙しく佐伯が喜瀬川に連絡を取れないうちに、喜瀬川の精神状態は悪化しつつあった……。 ]
 カラー付き(2C)。
 1年半ぶりの成層圏の灯シリーズ。
 ヒマラヤ第4ベースキャンプについて語る喜瀬川の台詞が印象的。喜瀬川はトリップしていた間のことは全然記憶にないんでしょうか。折角の佐伯の啖呵を聞き損なったとは勿体ない。……けど、幻覚と思って佐伯に言いたい放題言ってしまったことも覚えていないなら、おあいこか。ところで、カブさんは喜瀬川の過去についてどのぐらい知っているのだろう。母親に無理心中を仕掛けられたのは知ってるようだけど、聖さんと喜瀬川の本当の関係まで全部聞いてるのかな? 確か、喜瀬川が母親殺しをしたと言ったことが後々大問題の種になる……という記述をどこかで見たような気がするんだけど、その伏線はどうなったんだろう。とにかくどんどん続きを読ませてくれー。近々雑誌に掲載される予定があるのなら待つけど、いっそコミックス一冊描きおろしとかはどうだろう。

 モロな描写が多い作品と無い作品とのギャップが激しかったような。
 割れ割れの腹筋描写って、時にソファーの窪みを連想してしまうのは私だけでしょうか。

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2001.05.18 (Fri)

『LOVE MODE』I'm hungryII 志水ゆき

[ 天雪が「蒼江」に来てから3年。今は鹿島晴臣となった彼はボディーガードとして葵一のそばにいた。その頃、天雪の双子の弟・天雷はとある人物から葵一拉致の依頼を受けるが……。 ]
 巻頭カラー。
 I'm hungry 2ndステージ第1回。
 話の煽り方がなかなか堂に入っていて、これから始まる物語がどれだけ緊迫して重要なものか雰囲気を盛り上げてくれる。シリーズものは、ある程度人物配置がパターンにはまっていた方が安定感が出るし読者も感情移入しやすいから、過去編を分割してまず1stステージで地固めをして2ndステージで更に展開という方法を取ったのは賢明。これからどんどん加速度を上げてくるんだろうけど、しかし1stステージを読んでいてもいまいち、今回の葵一と晴臣のキスシーンに「しっくりしないな〜」と首を傾げている私のような読者もいるので、あまり「判ってるね?」とつっぱしられるとキツイかも。いかなる読者も取りこぼし無く物語を発展させて切なさ爆発させてください。

『君主サマの恋は勝手!』最終回 こうじま奈月

[ 拒む隆也に、副会長にはあくまで隆也を指名すると告げる織人。そして生徒会役員交代の日、織人から新役員の名が発表されるが……。 ]
 うーむむむ。決して好きじゃないはずの相手なのに、相手の押しが強かったりして不本意ながら親しくなってしまうのはままあることだと思うけど、そこでどうして隆也が織人のことを好きだと感じるまでになってしまうのかがよく判らない。人と人のお付き合いの中には、嫌いと好きの間にはもっといろいろな段階があると思うのですがのう。一気に「好き」までいってしまうのは思いこみの激しいお年頃だからだろうか。それともそこらへんの転変に敏感に反応できないのは、こちらにどーしても尊大な態度の織人の魅力が理解できなかったのが敗因か。隆也が侠吾に「後はもう俺がこいつと2人で話すっから」と言うところとか、織人に「俺の友達の悪口言うんじゃねーよ……」と言うところとかはすごく好きなんだけどなー。

『瞳のギワク』後編 あさぎり夕

[ 竜也の出生の秘密を同僚教師の宮田から聞かされた瞳は……。 ]
 前作『瞳のホンネ』が瞳の事情編だったとするなら、今回の『瞳のギワク』は竜也の事情編というところ。うーむ、感情が複雑骨折しているキャラですなあ、竜也は。親の冷たい態度を愛情だと誤変換して記憶してしまった子供の悲劇といえなくもないけど(でも瞳の受け取り方も変だ)、いまひとつしんみりしないのは、あまりにステロタイプすぎるセックスシーンのせいかしら……。

『loveholic〜恋愛中毒〜』最終回 川唯東子

[ 撮影の後、一人仕事場に残った西岡は自分が知らず知らずのうちに松川の写真を撮りためていたことに気づいて……。 ]
 カラー付き。
 うーんうーん、今ひとつ派手さに欠けたというか、インパクト不足というか、話としてちょっと平坦な感じ。恋愛ものは、相手への好意を意識しだしてから気持ちが通じ合うまでの紆余曲折が一番盛り上がるところだと思うんだけど、この話では初めからある程度2人の間に恋愛感情じみたものがあったので、その分ラストの大ジャンプまでの助走距離が短くなってしまったような気が。あと、松川の評判を落とそうと画策していた同僚をとっちめなくていいの?と気になってしまった。そして久美ちゃんの立場はー? 松川の裸の腕に描いてあるのはー? 通しで読むとまた印象も変わるのかなあ。

『イソ▽ラバ』 美杉果林

[ 美大生の真柴友嗣は超売れっ子モデルの藤生裕章からベタ惚れされて同居中。しかし家賃の殆どは裕章が支払い、友嗣は実質居候状態で……。 ]
 随分前に出たコミックス『オートマチック▽ラヴァーズ』('96年刊/ビブロス)の続編にしてモデルもの。(前作未読でも特に支障はありません)
 今は過ぎ去りしバブル期の残り香漂うストーリー。片や顔良し性格良し家事万能人気抜群一流モデル、片やプライドと向上心はあるが貧乏美大生(でもバイトレベルといいつつモデルの仕事もやったりしてる)なんていう、身近というか雲の上というか、なラブストーリー。作者はそりゃもうキャリアの長い人なので、この人の漫画を読むと、商業ボーイズ勃興期を思い出して何とも懐かしい気分になってしまいます。男の子同士が互いに相手を特別に思っていると伝えあうシーンが出てくるだけで、新時代を強く感じたあの頃……。それにしてもこれだけ長期に渡って描き続けているのに、ほとんど絵柄の描き崩れがないってのは凄いですなー。

『STORM 幸せになりたい』第2回 水上シン

[ 都の役人という身分を隠して山賊たちの砦に入り込んだ徐鉄一行だったが……。 ]
 若さに任せて奔放な生き方をしているかと思われた狼の、過去の悲劇とそして山賊になるまでの経緯が明かされる。何で“幸せになりたい”なんて、話にそぐわない感じの(失礼)サブタイトルがついているのか疑問だったけど、これで納得いたしましたー。ほうほうこうきますか、という結構意外な展開だったですな。思いの外、重い方に転がっていったといいますか。……しかし徐鉄のような人間を相手にすると、その実直さに救われるか、その無理解さに嫌気がさすかのどちらかのような。ワタシ的にはこういうタイプには苛立ちが先に来てしまうんですが。やはり年くってるだけあって、生まれ育ちの違いを説いて「中途ハンパな同情はおよしなされ!!」と徐鉄を諫める黄爺の言葉が正しいように思います。とーこーろーでー、徐鉄たちとはぐれた大勢の兵たちは今頃いったいどこをさまよっているのでしょう。

『最後のドアを閉めろ!』後編 山田ユギ

[ 逃げた花嫁と再会した斉藤を放っておけず永井は斉藤を自宅に泊める。しかし一方で本田の背中も追ってしまい……。 ]
 後編にしてシリーズ最終回……のはずが、全然終わってません。これではコミックスを買うしか……! つーかラストページ、永井の膝に手をのばす本田はともかく、すべてを覆すような斉藤のその足は何なのだー。いろいろふっきれてついに攻めに目覚めたのか?>斉藤 チュウもしてたしなー。コミックス(描きおろし付き)でも決着つかなさげな3人、楽しい泥沼が待っていそうです。でも永井もかなり自業自得。永井といえば、今回「ワタシ脱いだら凄いんです」状態でしたが、ヤバめなシーンの後にギャグシーンが入ってるのは、作者の照れなのでしょうか。

  • 『忘れ貝』カヲルの過去編。あの場面で幼い薫が読書に夢中で全然反応をみせなかったら、小西サンもショックだろうなーと思ってしまった私は根性悪。続きは10月号。
  • 『HEAVY-DUTY』ルームメイトに暴力の連鎖とは異なる方向性を示したアーチャーの言葉が印象的。
  • 『謎のまっしーまんが』8月号にて終了のお知らせ。ガガーン。

 アンケートハガキを挟んで巻末にカラーページが2枚……。とってもバランスが悪いと思うんですが、スケジュールの都合でしょうか。

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2001.05.22 (Tue)

[メモ]少女漫画とボーイズラブ

 白々しくも日にちをまたいで前日の日付で更新を続けていると、実際の日付が判らなくなってきますねー。(うう、すみません)

 時々、登場人物の言動に対し、そういうキャラ設定なのか、それとも作者の練りこみ不足なのか判別がつかないことがあります。読者の立場としては、「設定」として読むのが筋なんでしょうけどねえ。むむ。
 それと、やはり少女漫画とボーイズラブ漫画ではお約束事項が違うのだなあ、と思う今日この頃。面白い少女漫画を描かれた方のボーイズラブ作品がしっくりくるかといえばそうでもなく……。難しいものですねえ。

 そういえば、萩尾望都『残酷な神が支配する』がいよいよプチフラワー7月号(5/26売)で完結するようです。心臓に悪いので熟読は避けているのですが(完結後に読めたら読むつもり)、この大作はどういうラストシーンをむかえるのでしょうか。

 もう一つ。
 発売中の「ウーマン劇場特別編集・ご近所スキャンダルvol.7」(竹書房)に深井結己『やわらかなナイフ』(新作)と西田東『逃れの町』(再録)が掲載されています。ボーイズラブではないお二人の作品に興味がある方はどうぞ。

 コミックス版『五条霊戦記』(角川書店)を読んでつくづく思うのは、逢坂みやって基本の絵はかなりな美形なんですよね。それがやおいになると、どうしてああも怖くなってしまうのか。漲るパッションの成せる業なのでしょうか。

 今市子『文鳥様と私』(2)は、鳥たちの繰り広げる妖しくインモラルな関係がやおい的にも大変おいしい展開となっております。

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2001.05.27 (Sun)

[近況]ヤフオク有料化につき

 これまで何回か絶版本や同人誌の入手にヤフーオークションを利用してきましたが、5/28から本人確認が実施されるにあたり、カード番号を連絡しなきゃならなかったり、加えて手数料を取られたりするんじゃ、よっぽど欲しい物が出品されてるんでもない限り当分オークションには参加しないだろうということで、最後の一暴れをしてみました。
 今までは、競り合われてどんどん高額になってゆく商品には「ほえ〜〜っ」と驚嘆するのみで、元値を超えないような金額のものにばかりちまちまと手を出していたのですが、しかしよく考えると、たとえば同人誌即売会いわゆるイベントに出かけるにしても、私のような地方の者は交通費や、時には宿泊費なども含め結構な額のお金をかけて現地に赴く訳です。それに比べれば同人誌をめぐってオークションで競り合われている金額って、実は安いのかもしれない――。そのことに思い当たった時、脳ミソのどこかでプツリと何かが切れる音がしまして(笑)
 結果、多少競り合いはありましたが、同人誌を1冊ゲットすることに成功しました。でも万は超えてないし、それほど壮絶な戦いという訳ではなかったと思います、多分。開始価格の20倍、元値の10倍ですが、ええ、なるべくそのことは考えないようにしようと思います。
 早く届かないかなー。

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