「誘う男」のもまりの ビブロスビーボーイコミックス ISBN4-8352-1288-6 C9979 \562E
[一瞬で終わってしまった中1の恋を忘れられずにいる但馬春樹は、親の会社に入り退屈な日々を過ごしていた。そんなある日、ゲイバーで印象的な青年・煌司と出会うが……(『誘う男』)。他、編集×漫画家を2編収録。 ]
MAGAZINE BE×BOY 12月号掲載の『コイゴコロ』に気をひかれて購入。……が、作者的にはそうかもしれないけど、この話をアダルトラブロマンスと呼ぶのは如何なものかと。初対面で春樹を誘う煌司や、春樹の父親に銃を向ける煌司の表情にはハッとさせられるものがあるけど、『コイゴコロ』で煌司があんまり思わせぶりなことを言うので、濃ゆい情念の世界を想像していたのに、確かに復讐譚だけどもっとずっと単純な話でちょっと拍子抜けしてしまった。後書きを読むといろいろと削ったキャラクターやエピソードもあったそうで、どうせならせっかくの長編描きおろしなんだし、何ページになろうとも全部描いて欲しかったなー。どうも、おいしいところの大部分を『コイゴコロ』に持っていかれている感じがする。二つを上手く混ぜ合わせるか、キッパリハッキリ春樹バージョンと煌司バージョンに分けた方が良かったかも。関連する話が別コミックスに入ってしまうというのも何だか中途半端な感じだしなあ。どうにも「予告編の方が面白かった映画」という感じです。
同時収録の連作漫画『幸せな男』『幸せな男 2』は、主人公で編集者の佐伯陸の甘っちょろい仕事ぶりに頭がクラクラ。何よりも現場を知っている編集部がよくこの話を通したものだと思いますが、漫画は夢と希望に溢れているべきものだからいいのですかねえ。
西村マリ『アニパロとヤオイ』(オタク学叢書)という本が太田出版から出るみたいです。(ISBN4-87233-643-7 A5判 \1600)
ヤオイとカタカナ書きなのがちょっと気になるところ。(気にしすぎ?)
[ 税務署に勤める本田正一には、10年前に家を出た弟がいた。誰も知らない、弟が家を出た理由とは……。 ]
巻頭カラー。
本田3兄弟のうち、長男&次男の話。
とはいえ、長男の正一は養子で、次男の俊二と血の繋がりはない。が、だからといってラッキー♪とばかりにあっさりラブラブになってしまえる訳もなく、殊に養子である正一は簡単に自分の本心に従うことができない。いっそ赤の他人だったならもっとコトは単純なんだろうにねえ、と思わせる正一の葛藤が読ませます。続きは3月号。
いやそれにしても正一、俊二、賢三とそれぞれに男前な兄弟ですなー。それと、『最後のドアを閉めろ!』では、やり手っぽく隙がなさそうな本田(賢三)だけど、給料日前になると実家に姿を現すという庶民的なところも見られてほのぼの〜、でした。
[ 高校生の弘詩は同い年で寺の住職の息子、一心と付き合っているのだが……。 ]
高校生もの。
あらかじめ諦め気味の答えを設定した中で当て所もなくぐるぐる回り気味な弘詩の思考回路が青いといえば青く、鬱陶しいといえば鬱陶しい。弘詩が感じている一心のスケールの大きさや「生身」な感じも言葉で説明されているばかりなので、いまいち弘詩に同調しにくいのだなー。主人公のモノローグに終始させるのではなくて、最終的にはドカンと殻をうち破るような展開にしてほしかったです。
[ 汚れなくてはいけない、と陣に抱かれようとする皇子だったが……。 ]
何だか理屈がよく判らない話だ。何でわざわざ皇子は日本くんだりまできて男に抱かれなくてはならないのでしょーか。そもそも“汚れたら”修道院には行かなくてもいいかもしれないが、それは必ずしもファイのそばにいられることと同義ではないと思うんだが。いつまでも子供のままではいられないのだから、ちっとは大人になれという感じです。
[ ことりが鏡の中にいるらしいと知った千景たちは校内の鏡を割り始めるが……。 ]
うー? ううむ……。ファンタジーなようなそうでないような、どのあたりに位置づけたらいいのか判断に苦しむ話ですのう。弟が男と付き合っている千景の悩みを我が身に置き換えてこれまた悩むことり――が、唐突に荒唐無稽な展開に突入してしまった今回の話だけど、やっぱり誰よりも何よりも赤石とのことが大事、とことりがはっきり意識するに至ったのは、今後の展開において重要なターニングポイントとなるかも……と思ったり。というのは、この漫画だけでなく、ボーイズラブ系漫画の全般的な傾向として、二人だけの狭い世界でのラブラブから周囲にカミングアウトする方向に話が進みつつあると思うので(あくまで印象論ですが)。という訳で今後の動向を見守りたいところ。
[ くじ引きの結果、放送同好会を代表して生徒会室に乗り込むことになってしまった1年の藤枝忍は副会長の阿久津に一目惚れするが……。 ]
カラー付き。
原作:斑鳩サハラ。
01年7月号『花束なんか欲しくない』の裏話。藤枝バージョンという程独立した話ではなく、エピソード補遺集という感じなので、前作を読んでいないと話が判りにくいんじゃないだろうか。あと、登場人物の表情の表現は優れているのに、いまいちトータルでの感情の流れが掴みにくい。特に阿久津。結局、阿久津と海棠のキスシーンは何だったんだ、いつの間に阿久津は藤枝を好きになってたんだと疑問符が。ちょっとバランスが悪い感じ。
風が吹き込んで寒いからといって、隙間にちまちま詰め物をしても根本的な対策にはならんのではないでしょうか。お高いが火力の強い灯油を購入するか、手間をかけて薪を準備するか、さもなくば思い切って建て付けの悪いところを修理するか。
そんなことを思ってしまう今号でした。