[ 志津川英明の中にはもう一つの人格“カイリ”が存在していた。カイリは次々に男達と関係し、その写真をサイトで公開していたが……。 ]
巻頭カラー。
解離性同一性障害絡みのリーマン系。
結構シリアス。いろいろとツメが甘いような気もしますが、過去に祖父から性的虐待を受けていた英明の羞恥心や罪悪感が痛いです。結局、英明はどうなってしまうんでしょうかねえ。人格的にも社会的にも。しかし、カイリ(解離)にアラタ(新た)というネーミングは如何なものかと。
エロ度はかなり高いですが、局部のアップが多いので、消しが入ってしまうと何が何だか判らなくなってしまうのが難点か。
[ 身よりのない高木なつめは、仕事を失ったその晩、ふとしたことで通りすがりの青年・真珠勇一に拾われるが……。 ]
カラー付き。
「属性:孤独」な青年もの。
ムダに強い勇一が素敵です(笑) が、何を考えているのかよく判らんキャラですのう。つまり、何ですか、一度は因縁をつけてきたなつめにムカついて殴り倒したものの、顔が好みだったから連れ帰った、ということなんでしょうか。で、金は払うから家政婦をやってみないかと。勇一のじじ(祖父)によれば、勇一は人間関係で痛い目を見続けてきたせいで「人一倍臆病で用心深いさみしがりな子になってしもうたんじゃろ」ということだそうですが、この不器用を通り越した強引な人間関係づくりをみていると、ただの変人としか思えないよーな。あげく、素性の知れない男が隣の部屋にいるというのに、深夜オナニーショーを開いてしまうとわ……。素敵すぎです。そんなになつめが好みのタイプだったんですかね。若さって素晴らしいなあ(笑)
まあ、話そのものは、見たくもない人間の裏側を見せつけられて傷ついた青年二人の触れあいストーリーで、どっちかというとシリアス寄りなんですが。直情径行ななつめの性格もあって実質2日間ぐらいでバタバタと話が終わってしまっているので、もちっと長い期間をかけて変わってゆく二人を見たかったです。
それにしても、真珠と書いて「またま」。どこからこんな名前を見つけてくるのでしょうか。
[ のどかな田舎に暮らすマイク(志麻郁夫=しまいくお)とビリー(高帯理一=たかおびりいち)。平和な高校生活を送っていた二人だったが、道端でとんでもないものを拾ってしまい……。 ]
ファーストコンタクトもの。
何と二人が発見したのは、アダルト耽美コミック「レーチン」だったのでした――という訳で、エロ本よりもハードな内容に恐れおののきつつ読み耽ってしまう二人の姿が笑えます。ライトでハッピーなファーストラブに幸あれ。
[ 大学生の秋葉原新之介は、息子の奇行を心配した母親からの依頼を受け、高校生の武志の家庭教師につくが……。 ]
カラー付き。
カップル的には、手練れというかダレダレカップルと純情高校生カップルの二組なれど、H的には恋と愛のレッスン3Pもの。
新之介の懲りない性格と軽妙な語り口に乗せられて楽しく読了。武志が同級生に告白するまでの心の移り変わりとか、肝心なところが吹っ飛ばされているような気がするのはご愛敬? それとも全部描きつくせと言う方が野暮というものかしらん。
[ 司書の高石と国語教師の佐賀は親睦旅行の宴会での出来事をきっかけに身体を繋ぐようになるが……。 ]
00年9月号掲載『demode』に至る話。教師×司書。
社会的に少数派であることを強いられているゲイの高石から見た男同士の関係が描かれているけど、予期せず男との関係に巻き込まれてしまった佐賀の視点も織り込まれていて、なかなか単純な話には終わっていない。簡単にキモチ良いからヤッちゃえ的な展開にならないのは、登場人物も作者も真面目だからなんだろうな。
佐賀にかばわれて一層傷つく高石の歪んだ表情や、佐賀の逡巡と欲望が入り混じったような表情など、キャラクターの表情もシャープに描かれてます。
自分のセクシュアリティを見つめ直す話が多かったような。
[ 墓地の見回りの最中、墓守の雪の前に現れた少年と狼は、なんと人狼一族の兄弟で……。 ]
巻頭カラー。
墓守×人狼少年(人型)。
いつも奇想天外な設定のキャラクターが登場してくるのがこの作者の作品の常だけど、人狼一族の末裔たる太狼と次狼(タロジロって南極物語かい)はさておき、主人公・雪 加夜(すすぎ かや)もかなり曰くありげな人物。登場人物が皆訳有りで、説明が追いついてないというか、設定が上手く消化されていない感じが。最初から続編有りの予定なのかなー? 内気なようでいて実はかなり押しが強い次狼と、人狼兄弟に「貴様らの素性など興味もないし係わるつもりもない」と言い放っておきながら言葉と裏腹に二人の面倒見まくりの加夜は、結構鬱陶しいカップルになりそう。
タイトルが“Three Wolves”で、狼が一頭足りないのでは……と思ったら、人狼兄弟+一匹狼の加夜ということで合計3頭ということなのかな。あと、濡れタオルで額を冷やすなら前髪は上げてやらないと。
[ 特殊能力を持った人間で構成される秘密機関――リスキーソサエティ(RS)。現在のRSエージェントは嶺、勇斗、瞳の3人で……。 ]
カラー付き。
エスパー系の青年もの。
うーん? 思わず特殊能力(サイコキネシス?)を発揮してしまった瞳が何であれほど狼狽えるのかがよく判らなかった。常人にはない能力が売りのRSならば、何の能力も持っていない方がむしろ所属する資格を失うんじゃないかと思うんだけど。暴発だったのは、まあ、これから訓練して制御できるようにすればいいんだし。……というか、そういえば新入りの瞳に対して、RSでは全然特殊能力を引き出すような訓練を施した気配がないんだけど、ESPを持っている者をこそ集めた組織がRSじゃないのか……? それを、何もしないで放っておくというのはどういう……よく判りませんのう。
思わせぶりに登場してきた割りにただの道化に終わってしまった佐嶋は、マッドサイエンティストはおいしいネタだけど、今のままでは上っ滑りしたギャグのような存在としか言いようがありまへん。もっと徹底したキャラにしておくんなさいまし。
[ 書き置きを置いて姿を消した秋月。彼を捜す草加が見たものは――。 ]
うぬ。秋月、草加共に熱演なんだけど、いきなりクライマックスだけ見せられても、いまいち盛り上がらないのでした……。やっぱりですね、感動感激するのにも準備が必要かと。話が伸びそうな時って、ちょっとだけ後の号に掲載するより増ページで一挙掲載とした方がいいと思うんだけど、そうする訳にはいかないのかな。(いかないんだろうなー)
[ 誕生日プレゼントを山ほど買い込んできた香藤に岩城は……。 ]
春を抱いていた・番外編。
岩城と香藤の前世編『冬の蝉』の直後にこの話を持ってきたのは勿論わざとなんだろうなー。悲劇で終わった『冬の蝉』の後に読むと、この熱々ぶりに癒されます。もー香藤ったら相変わらずの岩城バカ。対する岩城もそれに負けてなくて、濃厚なホットチョコレート以上の甘々ぶりです。ごちそうさま。
[ エロ作家・左右木は同く居酒屋・漫遊常連のヤスケンからおいしい話を持ちかけられるが……。 ]
青年もの。下町風味。
前回登場時とは打って変わって今回は居酒屋が舞台。周囲から口出しされーの、言い返しーの、掛け合いのような会話が楽しいです。で、本作を読んで私はメガネ萌え、しかも優等生タイプやクールビューティタイプの眼鏡君ではなく、ちゃらんぽらん系な眼鏡君が激ツボであるということが判明いたしました。音無との絡みはどうでもいいですが、また左右木の出てくる話を描いてくれないかなー。
[ 大学生の志木恭介は、友人の代理で訪れた家庭教師先で、パチンコ屋で知り合った渋沢要人と再会するが……。 ]
カラー付き。
高校生×大学生。
何が話の問題点になっているのかよく掴めなかったので再読したら、そーか志木君はノンケだったのか……? この作者の話は積極的にホモな方々が多いのですっかり勘違いしておりました。(先入観って怖い) にしても、ちょっと話が曖昧なまま流れていってしまっていると思う。志木先生が無防備すぎるのか。少なくとも相手に夜這いまでかけられて、抵抗しないのはマズイでしょ〜。
[ ツヴァイの支援の元、脱出を試みるキリとトナミだったが……。 ]
大団円といっていいのでしょうね。話の中での最大の功労者はツヴァイかな。お疲れさんした。未来に希望を持たせるエンディングで、長期連載に相応しくなかなかボリュームのある最終回だったのではないでしょうか。
[ 最後までやってくれない尚哉にじれる俊明だが……。 ]
カラー付き(2C)。
芸能界もの。
傷つけたくないから距離を置いて、でも執着心は捨てられなくて、俊明が他の男にキスされているのを見て我を忘れて、鬼のような素顔を晒して、抱いてなぶって、後悔して。つくづく恥ずかしい性格ですなー>尚哉
新春特集はともかく、ファースト発射って何ですか……。
関係ないですが、プレゼントコーナーで初めて見たZips29『いにしえ特集』の表紙。物凄いイラストですな……。アレをレジに持ってく勇気はなかなか出ません。
やおい的なものを分類すると、
の3つに分けられるのではないかと考える。
更に強引にそれぞれの核となるものを取り出すと、
が挙げられるのではないか。
(勿論、時代は変わるものであり、作者も創作衝動も多岐にわたるものであれば、到底先に挙げたものに限定する訳ではない。)
さて、やおい同人誌の流通量に目をつけた出版社が参入し、既存のやおい的なものが縒り合わされて台頭してきたボーイズラブ。これのジャンル的キーワードは、エロだろう。
キャラ萌えの結果や、作者あるいは物語上の必然により展開するHではなく、読者の関心を引くため、また作品の量産化を可能にするための手段として積極的に導入されたエロだが、今や主客転倒を起こしている感が否めない。
確かにやおいとHシーンは切っても切れない関係にあるが、刺激的なものはそれだけ慣れられ飽きられるのも早い。何より、エロの単独提示は、人物の関係性に萌えを見いだすやおい好きに対して、実はあまり有効な方法ではないように思われるのだが。
やおいとは、本来そのケも何にもないはずの男性同士を強引に絡ませてしまうという天をも恐れぬ所業である。心ある人々には顔をしかめられる行為だが、一旦ハマると穴は深い。あらかじめ提示され確定された世界に新しい物語を発見するのだから、エキサイティングでない訳がないのだ。
その点では、やおいは常に「対象」を必要とする行為であるとも言える。やおいとは特殊なものの見方であり、見るためには対象が欠かせない。やおいが多く二次創作物として存在するのはその為ではないだろうか。(創作とて現実のパロディと考えれば同じことか……?)
さて、やおいは、ノンケな男性同士が何故か恋愛関係に落ちてしまったり、相手に執着したり、あまつさえ性的関係を持ってしまったりする、そこにこそ力があるのであって、現在のボーイズラブ(商業やおい作品)では、あらかじめ発情することが予定されている二人の物語となっているものが多数あり、原初のインパクトはかなり薄れてきているのではないだろうか。(もっともこれはやおい慣れしきった腐女子の言い分であって、一般の人が読んだら十分に刺激的ではあろうとも思うのだが)
最早、ボーイズラブはやおいとは呼べないのかもしれない。
ところで、「やおい」の表記について、やおい、801、矢追、YAOI、ヤオイのうち、801、矢追、YAOI、は許容範囲なのだが、カタカナ書きにすると背中がカユイ感じがするのは何故なのだろう。平仮名書きだと地の文に埋没しがちなのでカタカナ書きも良さそうな気がするのだが、強烈な違和感があるのだよなー。
[ T大学医学部付属病院勤務の白石と津田。密かに同棲している二人だが、ある日、白石の前に津田の身内と名乗る男が現れて……。 ]
巻頭カラー。
医者もの。3回連載。
『支配する指先』(00年1月号)、『愛を語る指先』(00年8月号)の続編。
うぬぬ。津田財閥に総帥ときましたか。ただでさえ不景気なのだから、話の中くらいドカンと景気良くぶちあげれ――ということなのでしょうか。しかしあまり舞台、設定共にご〜ぢゃすにされますと、ちと背中がムズムズいたします。
ムズムズするというと、白石の態度も相当にゾワゾワするものがありますが、後ろ向きな性格は性格として、そろそろ欲しいものはちゃんと自分で何とかするすべを身につけた方がいいのではないでしょうかねえ。いつまでもお姫さまキャラやっとる場合じゃないと思うんですが。
[ 小学生の頃、スクープ写真を撮ったことがある佐田栄一は高校に入ると早速、新聞部に入部したが……。 ]
ショタ入り気味高校生もの。
佐田と南条先輩とのデコボココンビぶりが愉快です。新人部員紹介記事(作/南条)にはマジ笑わせてもらいました。オチの付け方もいい感じで完成度の高い一作なのではないでしょうか。南条の過去も気になるところ。
[ 陣に薬を飲まされた皇子が目覚めると、目の前にはファイがいて……。 ]
皇子様帰国。――って、読後、アノヒトタチハイッタイナニシニキタノカシラ……?という疑問に満ち溢れてしまったのですが。最初はファイの留学先が実は日本で、下見に来たファイに皇子もくっついてきたのかと思ったけど、そうでもないようだし、皇子様ってば、本当に男とヤるためにだけ来日したのでしょうか。謎だ……。
でもって、修道院云々というのはどうなったのか、一夜限りの契りで皇子は満足したのか、これでファイを諦めるのか、それとも皇子とファイの繋がりは恋愛関係へと形を変えるのか、いまいちはっきりせず、ムード先行のままに話が終わってしまった感じですっきりしません。情事の最中にファイがごにょごにょ言ってたのは何だったんでしょうかねー?
[ 民間ボディガード会社Buckler Secret Saversに勤める三条は、同僚の吾妻が無茶をしがちなのが気がかりで……。 ]
ディフェンスラインシリーズ。社会人もの(女装つき)。
冒頭に吾妻の無茶な単独プレイを描いておいて、終盤、同様な状況になったところで三条に介入させコンビネーションプレイにもっていかせているのが話の展開として上手いところ。
ストーカーにつきまとわれている依頼人の代わりに女装した吾妻と三条がいちゃついてストーカー男を挑発するというのは、そりゃちょっとバレない訳ないだろーと思いつつ、うっかり萌えてしまいました……。不覚。
[ 東山華総の家庭教師兼恋人の櫻井嵐は、ある条件をクリアしたらHしてもいい、と約束していたが……。 ]
01年12月号の続編。中学生×大学生。
同性とのHの経験は全て攻め側で、それを6歳も年下相手に初の受けだとう!?という嵐のある種、乙女なためらいとか不安は、……華には判らんでしょうなー。尊大な態度はとっていても、華もまだまだ中学生で、自分をコントロールするのにいっぱいいっぱいらしいからして。しかし、そもそも何がなんでも入れなきゃならんという掟はないと思うんですが、やっぱりそうもいかないもんですかね。それにしても、華ってなんでああもエラソーなんだ。
話は読んでて長く感じてしまいました。もうちょっと何か仕掛けがほしいかも。
[ モテ人生27年のプライドを賭けて、本田にチョコレート獲得数勝負を挑んだ永井だったが……。 ]
スイートバレンタイン企画で8頁。
何故にわざわざ自分から無謀な戦いを挑むのか、永井よ……(笑) 本田の態度が男前です。しかし勝者は意外なところに存在していたのでした。ちゃんちゃん。
……で、結局この二人(というか三人)は、本田×永井で落ち着いていると思っていいのでしょーか。
[ 胃ガン検診を受けた淳一は、看護婦たちの噂話で自分が末期ガンだと思いこんでしまい……。 ]
カラー付き。
コンプレックスシリーズ最終話。
あー、結局キャラクターの葛藤っていったい何だったんだろうと思うシリーズでした。脳天気コメディに徹しろという気は毛頭ありませんが、最初悩ませておいて後はサラリと流してしまうという展開が繰り返し出てくるのにはどうにも中途半端としか思えません。もう一歩二歩三歩突っ込んで描いて欲しかったです。
ところで、他人宛の郵便を勝手に開けて見てはいけません。
描きおろし付きコミックス5月発売予定。
[ 同い年の航平と付き合っている直純。航平のことは好きだけど実はHが気持ちよくなくて……。 ]
高校生もの。
タイトルと話の内容があっていないような……?(キスどころの話じゃないでしょう)
なかなか可愛いお話ですが、ちと淡白。っつーか、二人が解り合う前と後とで、セックスの描写があまり変わらないので、いまいち説得力に欠ける気が。後半部では、もっとじっくりたっぷり、どのよーに航平が優しくしたか、どのよーに直純が気持ちよかったのか、ページをかけるべき、ここで描かないでどうしますか。――と、つい鼻息を荒くしてしまうのでした。(いったい何を書いているのやら)
[ 血の繋がらない弟・実の様子がおかしいと実家から電話をうけて帰郷した柊一だったが……。 ]
カラー付き。
義理の兄弟もの。大学生×高校生。
しんみりと読み応えある53頁。実の泣き顔が可哀想で切なくて、ほろりときます。これで全体的に萌えが加味されると最強なんですがねー。と無理な注文をつけてみたくなるほど、お話はまとまっています。コミックスが出たら、良質のボーイズラブ入門書になるんじゃないでしょうか。
とっこっろっでー、柊一君、母親の勘を強調するおっかさんに“本当に子供の事わかるんだったら俺が家を出た理由だってわかりそうなもんだろ”などと一人ごちていらっさいますが、本当に判ってしまってもよかったんかー? んー?
「コミックスで読んでね」と言われましても、買う気のない人間には無意味な言葉でございまする。