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2001.03.05 (Mon)

『東京ホテル』 紺野けい子

[ 大学受験のため、高校生の花本天(ハナモト タカシ)は東京で一人暮らしをしているイトコ・庸二郎の部屋に居候中。どうやら庸二郎は天のことが好きらしいのだが……。 ]
 巻頭カラー。
 屈折やら抑圧とは無縁な、開放的な話を描く人だと思う。しかし「受が女性と何ら変わりない描写」ではなく、ちゃんと男性同士という設定の上に成り立っている話。成程、これが「火のないところに煙を立てる」“やおい”ではなく「男性同士が割合葛藤なく、しかし自然に恋愛関係に落ちてしまい、かつリアルゲイではない」“ボーイズラブ”っちゅーもんか、と思ったり。
 で、お話のほうだけど、庸二郎が一人で話を大きくしているような気が(笑) 斉木からの電話は何とでもフォローができたはずだし、天と少年が接触した時も庸二郎があんな勢いで突進してくるからああいうことになったのであって、もっと穏便に捕らえることは十分に可能だったはず。まー、それだけ天に関しては過敏になっちゃうってことなのかなー。バタ臭い(死語?)庸二郎の風貌が、タイプではないんだけど何だか好きだったなあ。天と二人でやる(かもしれない)便利屋稼業の話も読みたいし、続編希望〜。

『架空の恋人』 七瀬かい

[ 少年好みの仁科奎吾は、友人の紹介で小椋という人物に会う。小椋は宮脇真聖という少年が待つ部屋へと奎吾を案内するが……。 ]
 いつものSMノリかと思いきや、Hでは役に立たない壮年の代わりに少年を抱く青年、という話。そして教師×生徒と見せかけて実は近親相姦ものなのでした。小椋氏乱入のあたりやや展開がぎこちないながら、小椋氏と真聖が互いに想いあっているので、結構言葉責めが効いてます。それだけに、疑似3P状態になってからはもう奎吾にはしゃべらせない方が良かったのでは。その方がより小椋氏と真聖の二人の世界〜って雰囲気が出せたんじゃないかと。もう少し細やかに描いてくれいと思う点も多々あれど(局部描写されても萌えねーよとか、小椋氏がその気になる様子も入れてくれとか)、やっぱりHプレイの派手さで関心を引くより、心情的に読者を巻き込む話の方が読んでて楽しゅーございます。あと、オチというかラストの奎吾の独白はまさにその通り〜って感じで……、お気の毒(笑)

『そして僕は途方に暮れる』3nd Stage 最終回 加山弓

[ 羽鳥の元を訪れた本田。しかしシンゴが共にいるを見た本田は、羽鳥にファンレターの礼を言い、そして合い鍵を返して立ち去ってしまう……。 ]
 つくづく衝撃に弱い人ですなー、羽鳥君。自分に好意を持ってるシンゴに、本田との恋愛の後押しをさせてしまうのって、大人としてどうよ? 自分の行動は自分で決めませうね。こんなんでこの先大丈夫なのかしらん。かなり心配だ。で、感動の最終回!!な割にはさらりと流して終わってしまったなー、というのが実感。本田が無理に合い鍵を手渡した時はどうなることかと思ったものの、すんなり和解してしまったし。ここまで引っ張ってきた話にしてはラストの大波が足りなくないか? コミックスでまとめて読むとこれはこれでバランスが取れているのかなー? ……っつーか、これは大いに余計なお世話なんだけど、羽鳥が本田を追いかけていったその後に、二人が愛情を確かめ合うというシーンがあって、まー要するに二人のHシーンがある訳なのですが、何つーかページを割いてるわりには淡泊なんだよね。流行りに乗って汁まみれのカットを描いてほしいとは思わないけど、修飾不足なのも否めないっつーか。これも盛り上がりに欠ける一因になっていると思います。

『ネコとマタタビ』後編 寿たらこ

[ 関西系暴力団会長の直系の孫・呉領大輔の担任を受け持つことになった水森珠美だが、大輔は珠美をペットとして日々無体なことを繰り返すのだった。そんなある日、大輔の元にボディガードだという美形が現れて……。 ]
 カラー付き。
 ロシア生まれのアメリカ育ちで大学課程修了済みの小6×教師。(ギャグにあらず)
 タマミがいつの間にか大輔を好きになっていた自分に戸惑うように、私もいつの間にこの話を好きになっていたのか疑問に思い、先月号を引っ張り出して改めて前編を読んでみたけど、やっぱり苦手――というよりキライな、強引で傲慢な年下攻の話だった。(ツボの人、すんません) それなのに後編は結構好きなタイプの話に印象が変わっていて、何故かというに絵柄の影響によるところが大きいような気がする。前編はガキとかわいコちゃんしかよう出てこなかったのでいまいち判らなかったんだけど、とてもシャープで勢いのある力強い絵なんですねー。大輔父のしたたかな目線や、ストーリーが動いたことでガキらしからぬ大輔の凄みのある表情とか描き出されて、いつしかそれに見惚れていたのでした。それに大輔がちゃんとタマミを好きな様子がほの見える描写もあったし。気づけば、大輔の嫁は大輔をも手玉に取るような勝ち気で豪放磊落な(形容詞が間違ってます)美少女がいいなァ、なぞと妙なところでドリーマーに。タマミにちょっかいだして大輔が怒るのをケラケラ笑って楽しむような子だったら、3人ともうまくやっていけそうに思うんだけど、ダメっすかね? それにしても「オレはこういう男だ。分かったら二度と(以下略)」ってアンタ、タマミには選択の余地はないのだね。そういうところが大輔らしいというか。
 絵柄の変化が激しい漫画家さんなので、今のうちにもう2・3作品望みたいところ。そしてどう考えてもこのタイトルは付け間違いだと思う……。

『ひざまずけ!美神(ビーナス)』新連載 えのもと椿

[ 高校教師・浅野青樹は交際を求めてきた男子生徒の五十嵐武をクールにかわす。しかしそれは、兄の助言あってのことで……。 ]
 カラー付き。
 生徒×教師……だけど、まだまだそれ以前の段階。新連載ってことで、ちょっとばかし絵柄を変えてきてるかな? おめめの全開度も普段の3/4ぐらいで、受攻共に斜に構えた風。ただし五十嵐はそれが自然体だけど、浅野は虚勢が入ってるのでクールなふりがどこまで持ちこたえられるかも見所のひとつになりそう。(さりげなく五十嵐に女物のチョーカーを顕示する様子と、その後の「……何とか…なった…」と床にへたり込む姿のギャップがおかしい) 浅野と五十嵐がらぶらぶになっても、女の子然とした受にはしないでほしいなー。

『指先の傷』 直野儚羅

[ 那珂川から同居の提案を受けた舞鶴は思わずその場を逃げ出してしまう。舞鶴が友人の山下宅に転がり込んでいる間に、那珂川はある女性からの依頼を受けるが、実はその女性は舞鶴の元婚約者で……。 ]
 カラー付き(2C)。
 舞鶴探偵事務所シリーズ。
 過去の作品はBE・BOY GOLD 99年2月号、b-BOY Zips15、同20に掲載。+同人誌が一冊(多分)。7月にビブロスから出るコミックスというのは恐らくこのシリーズなんだろうな。ちなみに那珂川姉はb-BOY Zips15でも大暴れしてます。ハートマーク付きの新婚旅行ということは、ボディガードの彼と結婚できたのかな?
 さて今回は気前よく2色カラー付き68頁で読みごたえはばっちり。しかもグロ度はかなり抑えてあるので気が弱い人でも安心です(笑) 普通は事件が解決してHしてエンドマークだけど、ページ数が多いともう一捻り入れられるのがいいですね。ただ、どうして舞鶴に虐待されていた子供のイメージが伝わらなかったのかが……。そこのところに一工夫ほしかったかな。ところで、那珂川は前髪おろしていた方がいいと思うのですがのう。そしてやっぱり山下警部は格好良い(はあと)。
 余談。ボンボン犬こと那珂川が拉致監禁されていたあのアパートは、『日向』で赤嶺走が両親と共に暮らしていたところです。ついでにいうなら『君のいる場所』(亘理なおみ)の高冬が家を追い出されて一人暮らししていた場所でもある。被虐待児童が集まりやすいのか、あそこ。呪われてるんじゃ……。というか、多分家賃が安いかして借り手にワケ有りな人が多いんだろうなー。というか、同じ背景を使い回さんでくれよぅ。というか、はは。
 余談2。前号で“カリスマ刑事とボンボン助手のグラマラス・ラブ”という的はずれな予告を打ってくれたのはだ〜れ?

『NO RETURN』後編 やしきゆかり

[ 道男と克、テツの3人は遊び仲間だったが、克とテツの間にカラダの関係があることが判って、道男は……。 ]
 お子さま暴走の巻。テツは誰のこともそんな風には誘っていないし、道男はテツのことが好きというよりは、克とテツの二人に置いていかれるのが嫌なだけだったんでないの? 勝手な思いこみを相手に押しつけるのは迷惑なだけです。もう一度胸に手を当ててよく考えてみれ。それは本当に恋なのか?

『WEST END』 葵二葉/紅三葉

[ 西への旅を続けるキリ達。ようやく目的地にたどり着くが……。 ]
 トナミはさておき、キリは下等人造人間デミウルのトナミが自分にとって必要な存在だということを、自分に対してきちんと認めているのですな。さすが野性的なだけあって余計な見栄なんぞ存在しないんだなあ。照れもなくトナミに誓約するシーンはキリの自信の程を見せつけられるよう。そいでもって、人造人間と思われていたデミウルこそ本来の「人間」であり、キリやハーヴェイら現在地上に自然に存在しているのは、「人間」が生存できる環境になるまで世界を存続させておくために用意された「ニンゲン」=強化人間、人類の亜種、ということなのかな。まあ「人間」にしても復元種か改良種というところで、どちらにしろ「城」によって手が加えられていそうだけど。
 ……それと、エロシーンでの「おしりいいッ」云々、露骨すぎる台詞は勘弁してください。ちゅーか、オシリで一番先に連想するのはいわゆる臀部というか、つるんとした部分なので、そこまで言うなら「おしりの穴」と言えや、なんちって……あいや失礼。

 久々に充実してた、かな。おいおいと思った話も勿論ありますが。
 第7回ビブロスまんが新人大賞の結果発表掲載。審査員総評で全員ほぼ同じことを書いてましたですね。描くための話じゃなく、自分の中に満ちあふれてきたものをまとめたら1つの話になった……というのがベストなんでしょうが。
 さて、プロの先生方の作品ですが、モロにナニがどーしたこーしたシーンを描くより、指の動きが想像できるような表情が描いてある方がよっぽどイヤラシイと思うのですが、どうでしょうか。

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2001.03.21 (Wed)

『シュガーキューヴ』 高座朗

[ カットモデルを捜しに街頭に出ていた新人美容師の相葉は、偶然に故郷での隣人・純也に出くわす。四才年下の純也は昔よく相葉にまとわりつき、そして相葉の彼女を寝取った少年でもあった……。 ]
 巻頭カラー。
 美容師×高校生で幼馴染みネタ。
 ラストシーンが何だかほのぼのしていて、多分笑うところじゃないんだろうけど妙におかしくて笑ってしまった。おかげで読後感はいいんだが、お話自体はあまり記憶に残らないのはどうしたことだ。キャラクターが美形すぎて表情があまり変化しないように見えるというか、殊に純也に告白された相葉が過去の彼女とのやりとりを思い出して……の後のシーンが、さらりさらりと流れてしまっているので読む方の胸にぐぐっと迫るものがないのだよなー。勿体ない。もっと登場人物の感情が強く伝わってくるような表情をお願いしたい。

『有機感覚』 青樹糸忽

[ 好意を抱いていた高校時代の友人・聖士から、つきまとってくる粘着質な女を諦めさせるための偽装デートを頼まれた隆臣は……。 ]
 恋愛未満な2人を描く24頁。コトの真相を知った後に読み返すと、ラブホテルから出た後の聖士の見せた態度の本当の理由が判るようになっているところがミソ。でもちょっとさっぱりしすぎかなー。一番印象に残ったのは「それは本人に聞いてよ」と言う彼女の表情だったりして。次回はもうちょっとこってり風味でよろしく(笑)

『雨色』 猫田リコ

[ 住み込みで古くからの友人である唐沢の仕事の手伝いをしている夏目は、ある日突然唐沢から、親の決めた相手と結婚すると告げられるが……。 ]
 カラー付き。
 う、うーんうーん。イマイチ。というか、夏目はただの嫌なヤツにしか思えなかったし、唐沢にいたっては「何考えてんだコイツ」としかいいようがない。端から嫁を迎え入れる気もないくせに何だって唐沢は結婚なんかしたのだろうか。あの態度は“気難しい”だけで済まされるものではないと思うのだが。そこのところ、借金の返済のために是非とも〜とか、親に逆らうことなど許されぬ封建的な時代でとか、政略結婚、生まれつきの許嫁、家同志のしがらみetc.何でもいいから、一個人の事情では「結婚」に否やとは言えぬ状況である、というような設定の補強をしてくれないと、到底あの2人には感情移入できそうにない。夏目を諦めるための結婚、とか、結婚して初めて夏目への想いに気づいた唐沢、という風でもなかったしな。冒頭の夏目がバスを待っているシーンも「ケッ、本当は唐沢が追いかけてくるのを待ってるんじゃないの?」なぞと思ってしまい、私は運悪く2人の間に割って入るハメになってしまったお嫁さんにばかり同情していたのだった。

『Silent Bus』 森臣貴衣

[ 冬。想いを寄せていた同級生の名前を呼びながらの1人Hを、当の本人である成一に見られてしまった由樹は発作的に町を飛び出す。しかし途中でバスが脱輪してしまい……。 ]
 乗り合わせたバスの乗客(青年)×学生(中〜高校生)。
 人家の途絶えた夜の雪道で立ち往生するバス。助けを求めて出ていった運転手は戻ってくる気配もなく、そのうちガソリンも切れ、つのる寒さの中、取り残された2人は抱き合って暖を取ろうとする……なんて粗筋だけ書き出すと典型的な雪山遭難Hパターンのようだけど、萌え話というより、小さな町でゲイであることを隠し続けてきた由樹のためのカウンセリングセックスというような感じの話。決して暗い雰囲気ではないものの、何だか真面目に読んでしまった。謎の青年の正体らしきものは最後にちらりと出るんだけど……、あんまり察しがいいものだから実はあれは未来からやって来た成一で……というタイムスリップものかと思ってたよ。ははは。

『YOU GIVE』 西田東

[ 入院中の所長の代理として本社から首都圏万年最下位成績の営業所にやってきた橘は、以前、すちゃらか社員・青山が本社研修を受けた際の講師だった。バリバリの仕事人間になってしまった橘に青山は……。 ]
 「酔ったフリってのは営業でも使う技だぞ」などとなかなかに含蓄の深い台詞も飛び出すリーマンラブ。
 そういえば今回の話を読んで思ったけど、この作者の話には、“そのケはないはずなのに何故かアイツのことが気になって”的キャラは出てきませんね。皆さん自分の性指向についてはかなりはっきり意識してらっしゃるようで。まあ、登場人物の平均年齢も割と高めだし、まともに人生やってりゃ嫌でも気づかざるを得ない部分だし、ということなんでしょうか。ラストの青山と橘のくだけた日常会話もいい感じ。会話シーンもいける人なので、もうすっかり出来上がっちゃって倦怠期気味のカップル、でもやっぱりお互いが大事で〜みたいな話も描いてみてほしいかも。

『愛の呪縛』 亘理なおみ

[ 次の期末テストで平均70点以上をとらなければ留年、と担任の平から通告された永海。とある条件と引き替えに平に勉強を見てもらうことになるが、平の持ち出してきた条件というのが「自分を縛りつけながらセックスしてほしい」というもので……。 ]
 高校生×教師。
 感想はコチラ >>泥沼感想文 (やや長め。砂吐き注意) 片道通行につき、こちらのページにはブラウザのバックボタンでお戻り下さい。

『女敵』 大竹直子

[ 天明五年、狂言作者志望の勝俵蔵は駕籠かき仕事の最中に、思わず見惚れるような美貌の若衆が曰くありげに後を追ってきた侍をあっさりと切り捨てるのを見てしまうが……。 ]
 カラー付き。
 フルカラーでなく白黒映像が似合いそうな話。現代物でない話の場合、説明的な台詞が多く入っているものだけど、この話も俵蔵のモノローグが随所にナレーションよろしく入っている。でも心情まで全部解説されてしまうと、ちょっと語り過ぎのような気が。そのせいかどうか随分平坦な話のような印象なんだよね。

『世紀末カルテ。』 内田かおる

[ 初めて貰ったバレンタインの(義理)チョコレートを落としてしまった高校生の五十嵐はそれを拾いに川に入るはめに。風邪をひいた五十嵐はかかりつけの病院に行くが……。 ]
 医者×高校生。
 もう最初から医師の目つきがいやらしくて大変結構。なんだけど、内容がないようがないような……。そこまでヤッてしまうか、まさに世紀末な内容だ……と思ったが、ふと疑問符。世紀末っていったいいつの世紀末? 今は21世紀初頭のはずでわ……。「世紀末」の免罪符は効力期限切れです。

  • 何でこのタイトル?という話が1つ2つ。逆に付け方が上手いと思ったのは『イニシャルK・O』。ボケボケな受にノックアウトされる攻の気持ちをよく表していると思う。
  • 『春序音』に出てきたアーティストの通称が「ゴウ」。読んでる間、郷ひろみが脳裡をよぎって困った。愛称も含めて実在の人物とかぶらないネーミングをした方がいいんじゃないだろうか。
  • 南京ぐれ子のあのエッセイはいったい……?

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2001.03.24 (Sat)

『時の羅針盤』access*1 CJ Michalski

[ 未来を視る力を持つ鳥羽一族の末裔・暁人は、日本の中枢に位置する橘財閥会長邸の地下に半ば幽閉されるように暮らしていた。ある日、地上で行われていたパーティを一目見たいと地下を抜け出した暁人は、橘に強い恨みを持つ高見沢と出会うが……。 ]
 巻頭カラー。
 新連載。青年×少年。
 偶然の出会い、抗いようもなく恋に落ちる2人、再会そして逃避行、と驚くほどサクサクと進行する話。しかし短いページに沢山の内容を詰め込んだが故のダイジェスト的作りというよりは、思いついた粗筋をそのまま漫画に仕立て直したような感じ。オイオイと思うほどお約束すぎな展開で中味が薄い。今後の大化けを希望したいが……。

『ハートハートツアー』 島あさひ

[ 旅行代理店の新米社員・藤枝は、やり手の美杉主任に怒鳴られしごかれる毎日。得意先の社員旅行のツアーコンダクターを美杉と務めることになるが……。 ]
 一応社会人もの(部下×上司)。
 舞い上がるわ落ち込むわ、アップダウンの激しい藤枝のその姿はまるでひとり回転木馬。回る回る。七転八倒する様が微笑ましく見えるならともかく、藤枝の場合ただの馬鹿にしか思えないところが悲しい。客から無茶を言われても笑ってこなすか、さりげなくかわすのがプロってもんだろーがよ。勝手に憤慨した挙げ句、客に向かって「俺達はホストじゃありませんからッ!」と叫ぶなど言語道断、社会人失格である。それなのにどうして美杉がほだされてしまうのかが謎。馬鹿な子ほどかわいいというにも程がある。それともいかもの食いなのでしょーか?>美杉主任

『恋愛コード』 花吹雪桜子

[ 日本一売れてるタレントの水原晃二を恋人に持つアイドル・鮎川杏はドラマの共演相手の斉木史高から、水原と別れるよう忠告されて……。 ]
 少年娼婦シリーズ。
 芸能界ものだからといって、恋愛ものだからといって、必ずしもドロドロしている必要はないけれど、しかし薄すぎるのもどうかと思う。もう少しそれぞれのキャラクターを明確にしてほしい。あと“その人気は幼稚園児からお年寄り、サラリーマンまで”と水原人気を説明する箇所が妙にひっかかった。いまいち抽象的で、その過熱人気ぶりが伝わってこない気がするんだけどなー。「小さい女の子から主婦、男性層にも」とか、どの辺の層にどのように受けているのか具体的に例示した方が判りやすいのではないだろうか。まあ瑣末事だけど、この、表現されてはいるんだけど漠然としていてリアルに迫ってこないってところは物語全体にも通じているような気がしないでもない。

『楽園まであともうちょっと』 今市子

[ 旅行代理店「楽園企画」の借金を巡って、債務者の娘・小百合とその別れた夫の川江務、債権者のローンズキクチ社長の菊池とその社員で菊池と不倫中の浅田は奇妙な人間関係を形作っていた……。 ]
 カラー付き。
 花音'00年12月号掲載の続き。ああ人生泣き笑いという感のある今回だけど、この作者は普通この手の話にはあまり登場してくることのない年配のキャラを絡ませるのが本当に上手い。上手いといえばもうひとつ、常時サングラス使用の川江さん、おめめの描いてあるシーンは実に1カットしかないのだけど、そんなことなど関係なくとても表情豊かに感じさせるのはさすが〜な腕ですな。しかしサンダル履きで朝8時台の通勤列車に乗って足を踏まれたりとかしないんだろうか。で、次回っていったいいつ掲載になるんでしょうか。できれば今後の予定も柱に書いておいてほしいなあ>編集部 待ちきれませんわ。あと、酒が入ると殴るってのは小百合のことなんでないの?と思ったり、ぼんやりと浅田が川江に対して「デカい体……」と思う場面は、珍しく肉感的なニュアンスが漂っていたなー(でへ)と思ったり。

『我らの水はどこにある』ACT.1 山田ユギ

[ 地元の名士「仙頭家」に代々世話になっている阿部家長男の至は父親から、行方をくらました仙頭家の息子、竜彦を極秘に探し出すことを頼まれるが……。 ]
 新連載。唖然呆然の年下攻。
 それにしても竜彦ぼっちゃんの成長ぶりには目を覆う……じゃなくって目を見張るものがありますな。あっさり竜彦は見つかって、さあこれから話がどう展開するかが気になるところ。でも、5年ぶりに竜彦に再会した(と誤解した)至が流した涙は嘘ではないと思うんだけどな。竜彦くん、どうぞお手柔らかに(笑)

『ハッピーヤローウエディング』バトル・2 藤崎こう

[ 大学教授・藤堂瑛の家で家事バイトをしている津崎夕飛は、藤堂とその息子の昇太の3人で幸せな日々を送っていた。しかし見合い写真を持った藤堂の弟が現れてから夕飛の“家庭”が壊れ始めて……。 ]
 ママと呼ばないでシリーズ。
 一度歯車が狂い始めるとこんなもんなんだろうか。面白いように藤堂と夕飛の間に亀裂が入ってゆく……というか、皆単純すぎるというか子供だというか、真っ正面から壁にぶつかっていっては脆く壊れる玩具のようです。もうちょっと信頼関係とかいうものはないのだろうか……。ことにつくづく困ったちゃんなのが藤堂兄。邪魔者の弟よりよっぽどあーたの方が問題です。もっと大人になれ。

 カラかったらすんません。でも本音。(今更か……)

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2001.03.31 (Sat)

『君主サマの恋は勝手!』短期集中連載 こうじま奈月

[ 皇羽学園の特待生で高等部2年の藤緒隆也は、突然1年で新生徒会長の黒巴織人に副会長に任命されるが……。 ]
 巻頭カラー。
 強引で我が儘、好意の表し方が素直でない攻と、それに引っ張り回される直情径行、しかし根は真面目な受、という年下攻の王道を驀進しそうな話。隆也の友人である侠吾は、織人と隆也の間に割り込む役回りになるのか、それとも隆也の相談受付窓口になるのか、はたまた解説及び傍観キャラになるのか、どの道を進むのかな〜。ともかくも、織人のペースに巻き込まれつつも次第に彼を憎からず思うようになるだろう隆也の気持ちを丁寧に描いてほしいなァ、と今から希望。
 あと大人びたキャラクターの鼻筋が時にやや長くなり過ぎな傾向があるので注意されたし。隆也のでっかい目玉、眼鏡の枠からこぼれ落ちそう。

『恋人になる前に』 梅太郎

[ 友人の八木の退学は、久藤と塔本の間にも微妙な波紋を投げかけていた。久藤は塔本に、八木は同性の小谷と付き合っていると告げるが……。 ]
 カラー付き。
 高校生もの。
 かっきりとそれぞれのコマが区切られていない画面構成のせいか、久藤と塔本のどちらが主人公なのか判りにくいような。(読み始めてしばらくは塔本が主人公だと思ってた……。モノローグが誰のものなのか確認を要することもしばしば) 一人称漫画だから他人(塔本)の真意がはっきり描かれないのは当然なんだけど、それと、自分(久藤)の気持ちと他人(塔本)の気持ちと周囲の状況とに境目がなくすべて渾然としている世界が妙な具合に混ざり合って、ちと読みづらかった。展開の予測はつくんだけど、今何が問題になっているのかがすんなり伝わってこないというか。大本のシリーズ(小谷&八木シリーズ)を読んでいないのでそもそもキャラクターに思い入れがないのも原因かも。
 で、やっぱり素朴なギモーン。受け攻めっていったいいつ決定されるものなのかなー? そいでもって、久藤のHの時の変なクセって何なのでしょーか。

『大人の童話』後編 えのもと椿

[ 雨宿りがきっかけで知り合った高橋一紗と蓮見秋良。付き合いを始めた2人だが……。 ]
 デンジャラスMAGNUM番外編。
 淫らで奔放、率直でもあるし冷たいところもある小悪魔的な秋良と繰り返すセックス。いつしか秋良は本命の彼氏をすり替えていて、一紗の要求にもあっさりと応えてみせる。リアルな欲望より夜の水槽を泳ぐ熱帯魚のような浮遊感が漂う話。『大人の童話』というタイトルがうまくはまっていると思う。(←ポエム入ってます、すんません) 自分でも意外ですが、結構好きですねー、この話。
 ほほう、大人になると“きゅん”じゃなくて“ぎゅ…ん”にグレードアップするのかー。知らなんだ(笑)

『loveholic〜恋愛中毒〜』第3回 川唯東子

[ 同僚に妬まれ企画書の内容を他社に漏らされてしまった松川。一度は松川からの依頼を断った西岡だが……。 ]
 喉元まで言葉が出かかっているのにきっかけがなくて何も言うことができず、後々そのことをずっと悔やみ続ける――というのは誰にでも身に覚えのあることかも。誰かが、何かが、あの時後押ししてくれれば、その後の展開は変わっていたのだろうかと思い続けることも。
 西岡の思い出の中で、ロッカー荒しをしていた北村先輩は、「悲しかったんだ!」と叫んでますが、悲しくてそう何回もフィルムを切り刻んだりカメラを壊したりするもんかな。どうせゲロしてしまうなら「憎かった」「妬ましかった」と本音を言ってしまえよ、と思ってしまった私は根性曲がりです。本当に、悲しくてすべて滅茶苦茶にしてやりたい、と思っていたのだったらよっぽどセンシティヴな人だったんだろうな。ただ、思い出編で西岡と北村先輩の顔の区別がつかないのは勘弁してください、という感じが……。
 同僚に陥れられ結局有効な手も打てないままに、プレゼンの場で「ちくしょう、めんどくせぇな」と独りごちる松川がやけっぱちで素敵です。

『同棲愛』最終回 水城せとな

[ 椿は薫と同居していたアパートから引っ越す。ある者は誰かのそばにいることを望み、ある者は独り立ちすることを望み、そして半年後……。 ]
 カラー付き。
 最初の頃と比べて、変わっているようでもあるし変わっていないようでもある。でも確実に時は流れていて……という終章。光太郎は薫を羨ましがっているけど、薫の場合はマイペースといえば聞こえはいいが「周囲の迷惑を顧みないイイ性格」というのじゃあるまいか。それと千里がなるみのことで責められるのは筋違いじゃないかと思ったり。アピールもされてないのにそれに気づかなかったと言われてもねえ。
 そして驚いたというかああやっぱりというか、なマホリン……。マホリンの親なら、そりゃあハルを手放すなと言うわな。しかしハルはそれでいいかもしらんが、マホリンの方はそれで大丈夫なのかー?とやや心配。
 で、結局、馬掘を軸にして微妙に重なり合った人間関係にあった、というのは明らかにはされなかったのですな。実はかなり狭い世界でじたばたしてたんだよーん、あーらビックリ!という事態になるのをずっと楽しみにしていたんだけどなあ。(根性悪)

『ちょっぴりGOOな午前2時』 佐倉真美

[ “パパ”に本気になられて思わずその場を逃げ出してしまった大学生の狩野京也は、国崎コンツェルン御子息の家庭教師のバイトを始めるが……。 ]
 頑固な高校生×日和見大学生。
 5人目のパパからも国崎優からも同じように逃げ出した京也。だけど優に掴まってしまったその理由は、子供っぽい一途さと頑固さを抱えて世間にぶつかってゆこうとしている優に京也が惹かれるものがあったから、なんだろうか。全編を通して独特のノリがある話。時々それが寒く感じられたりするような気がしないでも……(失礼)。

『HEAVY-DUTY』新連載 石原理

[ 自分の父親を射殺したアーチャー・ローグは因縁のあるシンジケートトップのエミリオ・バーンスタイン(通称ジガー)の差し金により、更正率100%を誇るバビロン私設更正院に送致されるが……。 ]
 カラー付き。
 『カリスマ』(コミックス4巻+番外編/'97 2月号掲載)続編。コミックスを読み返してみたけど、今もって同人誌版『カリスマ』(「カリスマ」1巻収録)の印象はあまりにも鮮烈。マガビーで連載を始めた時は、いずれこのラストに辿り着くんだろうな、と思っていたものの、物語の軌跡が円でなく螺旋を描いてしまっている今では、もうこの最初の話に繋がることはないんだろうなー。12使徒及びジガーとの抗争の中でコーキを失い(今度こそ)、凄絶な横顔を身につけたアーチャーの唯一心の拠り所はマーフィーだけ、それ故にアーチャーはマーフィーに手術を受けさせない……という話もそれはそれでとっても読んでみたいけど、まずそんな展開にはならないだろうし。ところで、キップ・ストッカーは12使徒の一員なのでしょうか。一番弱そうなものが実は、というのはよくあるパターンだが。

 番外編で出てきたこと。(コミックス未収録につき一応補足)
 マーフィーの知的障害は脳の血塊を取り除けば、通常の社会生活がおくれるようになるらしい。検査した医師の名はトム・クルーズ。(冗談とは思えなかったけど、この命名には何か意味があるのだろうか)
 ジガーによりアーチャーとコーキに12使徒が放たれる。体のどこかに12星座の印を持つ、個体データ一切不明の刺客。期限なしの制裁行動。最初に姿を現したのは黒犬だった。
 警察の留置所でアーチャーが男の耳を噛み切るシーンもありましたな。

  • 『夢の子供』広瀬が背中に怨霊しょってるみたいですげー怖いです。
  • 『地図にない島』芹沢とフェリチタは何語で話してるんでしょうか。
  • 『キライ嫌いも』夕馬が留学すると知った時の雅也の憤りは何故だったのでしょうか。恋愛関係にある人同士はずーっとべったりそばにいなくちゃならんものなのか? それでさ、留学というなら2年3年帰ってくんなよなー。

 何だか、皆さん……、絵が壊れてきているような……気がするのですが……、気のせい……だと、思いたい春。

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